恋華
□嗚呼、無情
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間違ってるよな、この状況
ヒルドヤードの歓楽郷、温泉地で目的の岩風呂目指しいざいかんとして手渡された水着を見て、ユーリは絶句した。
「なんで黄土色……なんでTバック…しかも燕尾服の尻尾付き……?」
しかも!
ユーリはギッとおのれの護衛を見つめた。
どうしてコンラッドだけ、普通の競泳用水着なんだよ
「あのさ、グレタはいいよ?スクール水着はかわいいしでもなんで俺とヴォルフはここのヤツなの?」
あんたのみたいな一般用のじゃなくてさ?
ジト目でユーリはコンラッドに言った。
「どうしたのユーリ?グレタそれいいと思うよ?」
隣を歩くグレタが声をかけてきた。
「本当かぁ?」
「うん!バッタさんみたいでカッコイイ!」
バッタさん?グレタそれは褒めてるのか?
ユーリはがっくりと項垂れた。
「あぁ、もしかして貴方の分の水着を持ってきてなかったことを怒ってらっしゃったのですか?」
ようやく思い至ったという感じでコンラッドは言った。
シレっというなシレっと!!あんた俺を嵌めただろ、コレ絶対罠だろ、俺で遊ぶんじゃねぇ!!!!!
ユーリは涙目、顔は真っ赤だ。
「こちらの水着はお気に召しませんでしたか?
しまったな、ほら旅の荷物は少ないほうがいいでしょう?こっちで手に入れればいいかなぁなんておもってたから」
しれっというな、しれっと
「そうだぞユーリ何を騒いでいる!」
金髪美少年ヴォルフラムが言った。
「………なぁ、ヴォルフラム」
水着に着替えようと脱衣場に戻ろうとしたユーリは、ふと思い立って、立ち止まった。
「まさかお前もグルなんてことないよなぁ?」
「グルってなんだー?男かー?」
「視線逸らすな、俺の目を見て話をしろよ」
図星かよ畜生!!!!!
コンラッドにはギャグ禁止令出してやる。
ヴォルフの酔い止め薬捨ててやる。
「まぁまぁ坊ちゃん、後でお菓子買ってあげますから」
子供か俺は!子供だけどね!
憤然と歩くユーリを笑顔を絶やさずコンラッドはついていった。
しかし、心はどしゃぶり雨の中だった。