恋華

□present
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「参ったな…天気予報じゃ晴れだったのに」

ぼやくコンラッドの声は折りからの豪雨でかき消された。



ずぶ濡れになりながらコンラッドは走った。


既に水溜りではなく川と呼ぶべきかもしれない程の水量が道路にまで溢れてる。


運動になるからと徒歩で外出したのがまずかったのかな?

コンラッドは、ジャケットを脇に抱えてそう思った。

家を出たときには晴れていたのが、いきなり降り出した大雨で辺りはすこぶる視界不良。


水を吸った濡れたシャツが肌に張り付く

それに構わずコンラッドは走った。




「お帰りーコンラッド…ってどうしたんだよ!?
その格好は!!」


玄関で出迎えた有利は全身から水を滴らせているコンラッドを見て驚いた。

「ちょっと外に買い物に出ていたら凄い雨でね。
いや、参ったよ」

「そりゃあんだけ雨が降ってたらそうなるだろうけどさ?
なんでジャケット着てないんだよ、風邪ひくだろー?」

笑ってる場合じゃないじゃん!!

脇に抱えたジャケットを見て呆れ顔で有利は言った。

「あー…、だってこれが濡れたら嫌だったし…」

苦笑しながらコンラッドはジャケットに包んでいたある物を取りだした。


白の包装紙に青色のリボンにラッピングされた小箱だ。


「誕生日おめでとうユーリ」

優しく微笑みながらコンラッドはそれを有利に渡した。

「……え?これ俺に!?」


じゃあ…これを買う為にわざわざ…


「…馬鹿だなコンラッド、だからって…あんたが雨に打たれることないじゃんか!!」


「大丈夫だよ、俺体は頑丈な方だから」

「そういう問題じゃないだろー?
ほら!早く風呂に入れよ!」

「一緒に入る?」

「さっさと入れ!」

そう言うと有利はコンラッドを風呂場まで連行し、押し込んだ。



「ゆ、ユーリ痛いよ」

乱暴に自分の頭をタオルで拭く有利に抗議するコンラッドを無視して構わず有利は作業を続けた。


「いいからじっとしてろって!
でもよく俺の誕生日知ってたな教えてなかってのにさ」


「あぁ、ショーマが教えてくれたんだ。
『家でパーティやろうと思ってたのにゆうちゃんたら
レポートがあるからって断ったんだよー!!』
って言ってた」

情報源は親父かよ

「…バースディ・パーティなんてさ、照れくさくて…
レポートあったの本当だけどな」

子供の頃は家族と一緒にケーキを食べたりプレゼントを貰ったりするのが楽しみだったのだが。

「ユーリは照れ屋さんだね」

「プレゼント、サンキューな!」


中身は有利の好きなライオンのデザインのシルバ−リングだった。


「喜んでもらえて嬉しいよ」

顔を綻ばせながらコンラッドは言った。

「実は美味しいレストランを予約してあるんだ。
雨も上がったようだし…
ユーリさえよかったら…お祝いにデートに誘いたいんだけどな?」



「デートって…そういうのは美人なお姉さんにいえよ」


「……だめ?」

コンラッドは物好きだ、と有利は思った。

シュンと項垂れる彼に犬の耳と尻尾が見えるようだ。


有利がダメじゃねぇよ、行くよ!というと、ぱぁっと顔を綻ばせ、喜んだ。


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