恋華
□出逢った君に捧げしアイは
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「…おい、どうにかならんのかあれは」
濃灰色の髪を掻き上げて苛立ただしげに言ったグウェンダルに、出来るわけがないでしょうと、国内有数の美貌を歪ませ、目蓋にうっすらと水膜を滲ませた王佐が小声で返した。
「見てごらんなさいグウェンダル、あんなにしっかりくっきりはっきり空気作っちゃってまぁ…!!
アレを壊すなんていくら私でも御免被りますよ…!!
嫌われたくありませんから……あぁ、しかしべいがぁ〜〜〜〜!!!!何ゆえ私ではなく、コンラートにあんな蕩けるような笑顔をお見せにぃぃいぃ!!!」
……それは本人にそんな気が欠片もないのと、汁気を浴びるのが嫌だからだろう。
心の中で冷静にツッコミを入れたグウェンダルは、またぞろ盛大に汁気を放出し始めたギュンターにまたかと溜息すると、衛兵に命じて無理やり部屋から追い出した。
グウェンダルの頭脳と時間は眞魔国の繁栄とあみぐるみ製作に使われるべきものであって、溢れんばかりの汁対策をする為ではないのだが。
すっかり同僚の奇行に慣れてしまった自分が、ちょっと嫌だと思ったグウェンダルだった。
そして、その汁気の元凶である魔王陛下はといえば
「やっぱ、あんた男前だなぁ
それすっげー似合うよ、コンラッド」
「貴方のほうが、ばっちり決まってますよ?
とても素敵だ
……このまま浚ってしまいたいくらいだよ…ユーリ」
グウェンダルのすぐ下の弟、正装である白い軍服に身を包んだウェラー卿コンラートと、甘過ぎる空気を作りまくっていた。
この二人、最初の頃から妖しい空気を振り撒いていたが、すったもんだの末に、ダルコ経由でコンラッドが帰還してからというもの更に濃密な空気を大量生産するようになった。
あまり野暮なことは言いたくないが、せめて他所様の邸宅にいるときくらい自重 しろお前ら…!!
見ている方が恥ずかしいわ!!
グウェンダルの想い空しく、魔王陛下とその護衛は、心の底から愉しげに微笑んでいた。