NARUTOの話

□伝説の番長
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「なぁなぁ、ヤマト隊長」

「なんだいナルト?」

「その昔、『木ノ葉の写輪眼』って呼ばれた伝説の番長知ってる?」

( ̄□ ̄;)!!

僕は思わず左後方にある机を振り返った。
ちょうどその机の主が立ち上がって僕を見たところだったので、しっかりと目が合ってしまった。
彼の右目は無言の内にこう告げていた。
『余計なこと言うなよ』と。
そのまま彼は担任室を出て行った。
ナルトは全く気にした様子もなく、身振り手振りを交えて『伝説の番長』について語ってきた。

「なんかさ、10年くらい前?全国をシンカンさせたチョー強い番長がいたらしくってさ。当時の木ノ葉学園全体を従えたカリスマで、サシはもちろん集団戦でも負けたことがないんだって。話によると千回のケンカに黒星がゼロ!!相手の攻撃をその場でコピーして倒しちまうキョーイ的ドーサツ力とカンサツ力を持ってて、一回のケンカにつき一個。合計して『千の技をコピーした男』とも呼ばれたらしいんだってばよ!!」

すっげーよな!オレ、『伝説の番長』と勝負してえ!!と、はしゃぎまくるナルトの前で、僕はずっと冷や汗をかいていた。

なんとかして、誤魔化さないと。


「あー、ナルト。『伝説の番長』目指すんならとりあえずこのプリントを……」

「ノーサンキューだってばよ。『伝説の番長』ってケンカ三昧の日々だったんだろ?勉強なんかしてなかったに決まってるってばよ」

僕は「いや、そんなことはなかった。僕も教わったくらいだったし」と反論しかけて口を閉ざした。
さっき睨まれたのを思い出したからだ。

「それよりさー、ヤマト隊長」

「な、なんだい?」

そろそろ『恐怖による支配』発動の時かもしれないと思ったが、テンションの高いナルトの口はまるでマシンガンだ。

「隊長ってば今20代後半くらいだろー?10年前だったら隊長も高校生だったろうし、なんか『木ノ葉の写輪眼』について知らない?噂でもなんでもいいからさー」

つい語りそうになって慌てて目を反らしたが、ナルトは直も詰め寄ってきた。
仕方なく『恐怖による支配』発動を決意したその時。

「ナルト」

ぐわしと音がして、ナルトの金色の頭が揺れた。

「お前のために各教科から補習プリントもらってきてやったぞ。この前のテストも散々だったし、ここで一つ気合いを入れよう」


教室でマンツーマンしてやるよ。と、優しく温かいが有無を言わせぬ圧力を漂わせて、カカシ先輩が笑っていた。
にっこりと弧を描いた右目はそのままに、わし掴みにしたナルトの頭を引いて出口に向かっていく。

「痛いってばよカカシ先生!!やめてー!!ってゆーかオレってば勉強してる暇なんか無いの!!『木ノ葉の写輪眼』越えて全国の総番になんの!!」

「はいはい。目指すのはお前の勝手だけどね。このままだとお前留年。けっこうマジでヤバいから」

「へっ!留年なんか恐くねってばよ!それにオレってばちゃんと赤丸快出席だし――」

ガラリと扉を開けたところで、カカシ先輩は足を止めた。

「『木ノ葉の写輪眼』はな」

急にトーンを落とした先輩の声音に、ナルトはピタリと静かになってその顔を見つめた。
僕も……というか担任室内にいる教員も生徒も全員が先輩を注視していた。

「……全国模試でもトップだった」

そう言って、先輩は担任室を出て行った。
数瞬の沈黙の後、

「ウソオオオオ!?」

取り残されたナルトの叫びが響き渡った。
が、すぐにオーバーアクションで廊下に飛び出して行く。


「えっ!?マジ?いやウソだろ!ってかなんでカカシ先生がそんなこと知ってんだってばよ!!」

「さーなー。なんでだろーなー。あ、今度のテストで全教科満点とったら教えてやるよ」

移動して行く距離に比例して廊下から聞こえてくる声も遠くなり、やがて担任室はいつもの静寂を取り戻した。
呆気にとられていたおのおのが我に返って仕事に戻りだし、僕も手元の作業を再開したが、思考は完全に別の方向に飛んでいた。
10数年前を思い出し、

「『木ノ葉の写輪眼』……カカシ先輩、かっこよかったなぁ……」

と、うっかり呟いたくらいに。


P.S.

先輩はちゃんと勉強してたよ。闘ってる時もずっと参考書片手にしてたし。
でもそういえば、いつの間にか持ってるのがエロ本になってたような……。


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