NARUTOの話

□居待ち月
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「ああ、サスケ?元気か。」

この男は鼻が利くから、殆ど無臭のはずの忍の匂いを嗅ぎ分ける。

「何も変わりはない。」
「面白味のないヤツだな。ま、息災で何より。」
「アンタは?」
「もう知ってるだろ?」

見えなくなったよ。

弓なりに細められた瞼の向こう。
両の目は焦点を結ばず、人形のガラスの目玉のようだった。



『居待ち月〜2011カカ誕〜早く帰って来い、サスケェのバカ野郎!〜』



「悪いな。」
「いつもはどうやって外に出るんだ。」
「パックンを呼んでる。頼りになるのよ。」
「そうか。」

目を失い一線を退いても、この男は忍なのだとひどく安堵した。
カカシは昔から変わらない。

冷たい手を引き、夜道を進む。

「お前いくつになったんだっけ?」
「19。」
「若いねー。あ、オレね、今日33になったよ。」
「そうか。」
「……なんか他に言うこと無いのか。」
「ない。」
「酷いなー。」

鈴虫が鳴いている。カカシが待っている間に出てきた月は欠けているのに、それでもまだ眩しいほど明るい。

「何も見えないのか。」

まだどうでもいい話を続けようとするカカシを制して、オレは聴きたい事を訊いた。
カカシは一度口を閉ざし、また開いて答える。

「見えないね。」
「あの月は。」
「見えないね。」
「太陽もか。」
「見えないね。」
「薄ぼんやりとも見えないのか。」
「なーんにも。もー真っ黒だよ。」
「怖くないのか。」

ハハハ、とカカシは笑う。何の恐怖も窺えない、普通の笑いだった。

「んー、ちょっと前まで、完全に見えなくなるまでは怖かったな。ま、今はもう平気。」
「なんで平気なんだ。」

ナルトやサクラから、あいつら自身に起こった事以上の痛みや悲しみを含めて聞かされた。その間のカカシの『様子』を。

「なんでって言われてもな〜。」
「……。」

左手はオレが引いているからか、右手でカカシは首筋を掻く。

「里は、大丈夫なんだよね。」
「……。」
「それだけ。」
「あ?」
「ま、色々考えてだな、そういう結論に至った。」
「何を考えた。」
「えー……。まーその内本でも書くから。内緒。」
(コイツ説明するのが面倒なんだな……。)

話戻すけどさー、とカカシは右手をポケットに突っ込む。

「ナルトは『敬老の日』とか言って杖をくれたよ。」



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