NARUTOの話

□月読の恋人
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「不思議ですね」

響き渡る、苦痛に染まった絶叫
少し手首を捻れば、飛び散る血液
鼻孔をくすぐる、鉄錆びの香り
声を出せば、それは与えるものでしかなく

「あなたを……月読を支配するのはオレであるのに」

「オレの耳も」

「オレの目も」

「オレの声も」

「全てあなたの為に使われているんです」

「月読の中で、あなたはオレを支配しているんですよ、カカシさん」

喉を刺した刀を放し、オレは彼の頬を両手で包む
きつく閉じられていた瞼がうっすらと開かれる
オレは小首を傾げた
口布に覆われた唇が僅かに動いている

『……っ』

「ああ、声が出ないんですね」

ヒュウヒュウと微かに漏れる吐息
耳を澄ましても、苦痛の気配しか感じられず
オレの耳を支配していた絶叫は、既に途切れて消えていた

取り返した

オレは少し笑う

「カカシさん、あなたはオレの思考すら支配しているようだ」

力無い瞳がオレを見ている
オレは目を閉じた
視界が黒しかなくなる

取り返した

オレはまた笑う

「あなたを中心に、オレの思考が動いています。月読の核はあなただ」

月読を用いて嗅覚を停止する
鉄錆の香りも掻き消えた

おかしくてたまらない

「あなたから支配権を取り返しても、その原因はあなたです、カカシさん。あなたとの繋がりを断つ事はできない」

まだまだ時間はあるのだ

「まるで恋人どうしのようですね」

恐らくあなたは怪訝そうに顔を歪めるのだろう
こいつはいったい何を言っているのかと
今あなたはオレのことしか考えていない

「お互いのことだけ思っていればいいんです」

月読が解けるその瞬間まで
オレはあなただけのもので
あなたはオレだけのものだ


オレは口を閉じ刀を振り上げる
もう声も発さない

耳も目も声も取り返したのに
脳裏にあなたの苦痛を描いて
思考だけは囚われたまま

月読の終焉まで
あと―――







挿絵は水波様から頂きましたvv(よっしゃー!!)
最初は鉛筆画だったんですけど飾るって言ったらペン入れしてもらっちゃいました。
ありがとうございましたー!!(平伏)

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