龍が如くの話
□目覚めるとそこは暗い病室/赤い血の滲んだ白い包帯
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ワシャア、夢でも視とったんか?
おいおい夢やなかったらなんでワシのうのうとゴロゴロしてんねん。死んで地獄か桐生チャンの首抱えて笑ってなオカシイやろ。セルフツッコミ。
『“堂島の龍”と直接やり合える…本物の命張ったケンカができる』
『ワシャお前と勝負できりゃぁそれでええんじゃ』
『本気も本気“大本気”や!』
なんやぁ、夢かぁ……。
あないに熱いセリフ吐いて命ァ取りに行っといて、阿呆に邪魔されて強制退場とかひっどい夢やわぁ。夢が思う通りにならへんてホンマやねんな。ふらすとれーしょんやぁ。
そういやどっから夢なんや?桐生チャンがムショから出てくるって聞いたあたりから夢やったらメッチャ凹むわぁ。めらんこりーやぁ。
涎たらして桐生チャンが出てくるのを待つんはもう飽き飽きしとんのやけどな。まぁ、三日で待つのん飽きてたけど。
なぁ、あれからどんだけ待った?
なぁ、あとどんだけ待てばエエの?
桐生チャン、桐生チャン、桐生チャン……
「お、親父、目ぇ覚めたんですか!?」
「ああ?」
がちゃりと扉が開き、真島組の構成員の一人は顔を覗かせると血相を変えて直ぐ様「先生!先生!頭ァッ!」と喧しく走り去って行った。せわしいやっちゃな、と立て付けが悪いのか大きな音を発てて閉じていく、どこか懐かしい扉をぼうと眺めていた真島だったが、不意に首を傾げた。
「ここどこぉ?てかなんでワシは寝とるん?」
見回せば覚えのある部屋だった。無愛想な雑居ビルらしい扉、薬品や器具の押し込められたスチール棚、雑然とファイルが並べられた並べられた事務机、安物の応接セットはビニール張りソファと山のような吸殻入り灰皿が鎮座するプラスチック製ローテブル。部屋のあちこちに開封未開封問わず日本酒の瓶が立ち並んでいる。
そしてあの酔狂な医者の戦場に繋がる観音開きの扉。