QUIZ MAGIC ACDEMYの話
□夏の夜の夢
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ふあと、カーテンが揺れた。
風に撫でられ、セリオスはふと目を覚ます。
窓をぼんやりと見やれば、
満月に照らされた森がちらちらと見えた。
ベッドから抜け出し、窓辺に寄って、
涼しい空気の流れを感じる。
白い寝衣が微かに青く染まり、
形の良い唇が妖しく弧を描く。
部屋の暗闇から、
窓の形に切り取られた光の帯の中に、
白とも青とも交わらない、
黒い腕(かいな)が伸びてくる。
二本の腕はセリオスを包み込み、
セリオスは目を閉じて身を任せた。
その滑らかな首筋を、
猥らに赤い舌が舐め上げる。
セリオスは陶然として吐息をつき、
自らを束縛する愛しい人の髪を手に取った。
――お前が欲しい――
目の端に映る紅い髪が揺れる。
薄い皮膚を突き破り、赤い筋がこぼれる。
こぼれ落ちた赤は白を侵食していく。
赫く染まる。
赦されない二人を照らす月光が囁いた。
――全ては夏の夜の……
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「……夢――という夢を見た……」
朝、食堂で。
レオン、セリオスの二人は、向かいに座ったマラリヤの話に顔色を青くしていた。
「そういう訳であなた達の朝食に一服盛らさせてもらった……」
マラリヤは紫水晶の瞳を煌めかせた。
二人が彼女の持ってきたトマトジュースに手を伸ばしたからだ。
「本当に吸血鬼になったら困るから……とりあえず赤い液体を好むように……」
その時たまたま近くを通った眼鏡の二人組の会話が聞こえてきた。
「今日の一限目はロマノフ先生ですよね」
「そうですね。予習バッチリですか?」
「もちろん」
「テストしてあげましょうか?」
「どんと来いです」
「じゃ、行きますよ〜。第一問……今日の実験で用いる材料の一つで、溶媒となる液体の名称は?」
「えっと……サイクロプスの生き血?」
「正解です。ちなみに色は?」
「ええ!?……そ、そんなの教科書に無かったです。……意地悪しないでください」
「アハハ、すみません。困った顔も素敵だなぁ……なんて」
「カ、カイルくん……///」
以下略。
それを聞いたレオン、セリオス、マラリヤは……
「セ、セリオス……色は……?」
「…………緑がかった……赤だ……」
「大丈夫……飲んでも死にはしない……安心して……」
マラリヤアァァッッ!!!!と、二人の叫びが朝の食堂に響いた。
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