NARUTOの話

□とあるBARでの事
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任務後、久しぶりに外で酒が呑みたくなったので、報告書を提出した後、里外れの馴染みの酒場へ向かった。
黒い空から降りてくるのは重たい冷気。冬はもう間近のようだ。視線を上げれば青白い月。昨日は満月だったから今日は十六夜か。

大蛇丸は元気だろうか。

青白い月光から連想した男は、元気などという言葉が似合わない。というより、むしろ対極にいるような人間だった。
妙な組み合わせを思い浮かべてしまったことに苦笑する。するとその忍び笑いは静かな夜道に意外と響いてしまい、なんとなくバツが悪くて、私は道を急いだ。
今日は、できるだけ、誰にも会いたくなかった。



とあるBARでの事



「珍しいわね。あなた酒は呑めたの?」

薄暗く照明を抑えた酒場のカウンターで独り酒を呑む私にかかる声。口調は違うが、この皮肉げな、嘲笑を含ませたような声は間違えようがない。
先程の連想は、予知だったのだろうか。

「私も人並みには嗜むさ」

私はグラスを置いて後ろを振り返る。
記憶にあるより若干頬の痩けた姿がそこにあった。そして彼は口を開く。

「久しぶりね、サクモ」
「ああ久しいな、大蛇丸」

彼も任務後なのか、微かに血の匂いが空気に混じった。
黒く長い髪をかき上げながら彼は言う。

「何年ぶりだったかしら?随分と老け込んだように見えるけど」
私は笑みを乗せて応えた。
「お前もしばらく見ないうちに変わったな。…影が濃くなった」
「照明のせいでしょう」

軽く挨拶を交わしながら、彼は私の隣の椅子に腰を下ろした。

「何呑んでるの。私ももらおうかしら」
「芋虫テキーラ」
「やめとくわ」
「冗談だ。マスター、ウォッカを」

彼は本当に芋虫を噛み潰してしまったような顔で沈黙した。
私は上機嫌で彼にウォッカを差し出した。
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