NARUTOの話
□喫茶“山の案内人”
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「名前は?」
テーブルに向かい合わせで座って面接開始。
俺と彼の前にはアメリカン(ノンシュガー)が湯気と香りを立ち上らせて置いてある。彼も甘いものは苦手らしい。
「俺、畑 案山子ね」
「奈良 鹿丸っす」
「じゃあ鹿丸くん、木ノ葉ってバイトOKだった?」
「…秘密裏にお願いしたいんすけど」
苦笑。
「いきなりそう来たか。ま、いいけどね。携帯持ってる?」
「はい」
なんていうの、しゅかっという音とともに画面がスライドするタイプの携帯。彼はそれの黒いヤツを持っていた。
「赤外線あるよね?プロフィールの交換しようか」
俺の携帯は二つ折りにするタイプで、色はシルバー。
二つの携帯電話が赤外線を走らせる。
彼のプロフィールはっ…と。
NAME:奈良鹿丸
ヨミ:ナラシカマル
以下省略。
へー、自宅の番号まで入れてるのか。律義な子。
向こうも俺のプロフィールを確認したのか、変な顔をしている。
「俺の名前って妙な漢字使うでしょ?」
「え?」
「でもこれ本名なんだよね。戸籍もこれで登録してるし。もうちょっとカッコイイ字つけてくれてもいいのにね」
「はぁ」
「あれ?変な顔してたのってこれじゃないの?」
大抵の人はこれにひっかかるのだが、今回は違ったらしい。
「31なんすか」
「歳?」
「4、5歳若く見えるっすよ」
「世辞はいらないよ(ちょっと嬉しい)」
「いえ、本心っす」
「きみ、褒め上手だね(かなり嬉しい)」
「普段はこんなこと言わないっすよ」
「ナンパ?」
「アンタ男っしょ」
「そういう趣味が…」
「ありません」
俺はテーブルに頭を乗せて声を出さずに笑う。
彼はおとなしく座って困惑した表情をしている。
笑いの波が去って、目の前のアメリカンを喉に流し込む。
「あー楽しい。いいよ、うちでバイトしな」
「面接になってないと思うんすけど」
「いいのいいの。店長の俺が言うんだから。明日からこれる?」
「はい」
「それじゃ明日からよろしく。先生に見つからないように来るよーに」
「はい」
カタン、と席を立ってお辞儀。そのまま出口に向かう彼を引き止める。
「鹿丸くん、せっかく出したんだからコーヒーくらい飲んでいきなさい」
慌てて戻ってくる鹿丸くんを見て俺はまた笑ってしまった。