NARUTOの話

□STAND BY ME!
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結局その日一日任務は入らず、他人の持ち物をメチャメチャにしてくれた酔っ払い連中に、数件の酒屋をハシゴさせられた挙句割り勘負けしたゲンマは、とぼとぼと寂しさと悔しさに歯噛みして夜道を歩いていた。

「最悪な一日だった……」

ようやく酔っ払いに解放されたときには、既に零時を回っていた。

後腐れ無くつきあえる一夜の恋人を多く持つゲンマだったが、今日に限って誰とも連絡がとれず、あいつらに関わるとろくな事が無いと深いため息をついた。

「あれ?ゲンマじゃないですか」

軽く丸まった背中にかけられた声は、一日の疲労は感じられたものの爽やかだった。
振り返ると、予想通りシズネが居た。

「お疲れ様です。任務大変だったでしょう?」
「お疲れ。任務は大したことなかったんだが移動時間が長くてな……今、帰りか?」

口元に、ささやかな笑みが浮かんだ。

昼間ほど蝉は騒がしくなく、ほとんど満月に近い黄色い月が明るい夜道を、他愛の無い話をしながら二人で歩く。
七月の夜は蒸し暑く、たまに風が吹くと一瞬だけは涼しかった。

やがて二人は一軒の家の前で立ち止まった。

「すみません。送ってもらっちゃって」
「かまやしない。明日も五代目のパシ……監視だろ?早く寝ろよ」
「私は医療忍者ですよ。体調管理くらいできます」

むくれたふりをしたシズネだったが、自分より十センチほど高い位置にあるゲンマの顔をふと不思議そうに見上げた。

「どうした?」
「いや……何か言いたいことが有ったはずなんですけど……なんだったかな?」

この辺まで来てるんですけどと頭を掻くシズネに、ゲンマは苦笑して言った。

「オレの誕生日のことか?」
「あ!そうですそうです!!わーごめんなさい。どーして忘れてたんだろ!」
「まあ正直な所、この歳になって誕生日も何もないだろ」
「そんなことないですよ!お誕生日おめでとうございます」

すっきりした、とにっこり笑うシズネを認めて、ゲンマはくるりと背を向けた。

「ありがとな。じゃ、また明日」

初めてまともな祝いの言葉をもらった。

と心に呟いたゲンマは、また背にかけられた声に思わず振り返ってしまった。

「時間できたら、一緒に食事でも行きましょう」

おやすみなさい、と言って家に入って行ったシズネを呆然と見送り、しばらくして千本をふらふらと遊ばせたゲンマは、少し軽くなった足取りで帰って行った。



朝になると、どこからか覗いていたらしい(腐っても)上忍の三人に、

「ゲンマって意外と本命には奥手なのね。カワイイとこあるじゃない」
「しかしオレも最近、そろそろ青春も無理な歳だと思いだした所だ。急げよ☆!!」
「でもシズネに手を出すと五代目に殺されるかもよ。あぁあとさ、社交辞令って知ってる?」

等とさんざんからかわれることになるのだが、その事をゲンマは知らない。

さて今日は良日か厄日か?



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