NARUTOの話
□月夜
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家にある花瓶だけでは間に合わなくて、コップやポット、果ては鍋にまで水を入れて芒を生けた。
「量を考えて持ってこいよ」
「多いほどいいと思って……」
しょんぼりと床に座りこんでいるナルトがあまりにもアレなので、クシャクシャと頭を撫でてやるともっとうなだれた。
「ま、コップは茶碗で代用できるし、ポットも鍋も普段使わないから。気にするな」
苦笑して言ってやると、またニシシと笑いだした。
「少しは気にしろ」
ナルトが口を開く前に釘を刺すと、ナルトはうっと詰まってそっぽを向いた。
大方「オレが来たから、ポットも鍋も使用法ができたんだってばよ」とでも言うつもりだったんだろう。
事実だったりするわけだが教えてやる気はない。
「ナルト、水飲むか」
「オカマイナク。って少しはかまってほしいってばよ」
茶碗にミネラルウォーターをよそぎながら、オレは冷蔵庫の中身を思い出す。
「ムリ。今家にはビールしかない」
「じゃ、ビール」
「バカ言うんじゃないよ。未成年」
いーじゃん、カカシ先生のオヤジー。と生意気なことをほざくナルト向けて、戯れにクナイを一本。
適当に投げたものだから正確に飛んだかどうかは分からないが、茶碗と缶ビールを持って行くと、若干青い顔したナルトがクナイを捧げてきたので満足して座る。
「さて、ナルト。オレたちは何に乾杯すればいいのかな」
「はい。まずはカカシ先生のお誕生日に乾杯するのがいいと思います」
ちらちらとオレの顔を見ながら言うナルトは、茶碗をくるくる回して波紋を作っている。
何を考えているのやら。
「ん。じゃあ祝ってもらおうかな」
缶を手に取って言えば、ナルトは嬉しそうに笑って茶碗を持ち上げた。
「カカシ先生、誕生日おめでとうってばよ」
「どーも」
触れ合わせた材質の違う容器は、質の違う音を発してまた離れた。
離れたのだが、しかしそれぞれの容器は持ち主の口に運ばれることなく、手持ち無沙汰に止まっている。
「飲まないの?」
「カカシ先生こそ」
じっとオレの顔に突き刺さる未成年の視線が気になって、正直飲酒する気分ではなくなってきた。
「……やっぱ止め。ナルト、団子食うか?」
「ええ!?」
「どうした。団子は嫌いか?」
ショックを受けた様子のナルトは、わたわたと意味もなく両手を振り回していたが、重ねて尋ねると、いる。と答えた。
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