龍が如くの話

□大吾さんと真島の姉さん。
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(一方その頃。)


「……。」

苛立ちに任せてミレニアムタワー前庭まで来てしまった。火を着け煙草一本吸いきるまで留まってみたが、予想通りというか当然というか、でもひょっとしたらという俺の淡い期待を完全無視して叔父貴は現れない。
重い煙を吐き出し、フィルター近くまで燃えた煙草を吸殻入れに突き落とす。叔父貴には組織を率いる立場としての大事からこんな些細な事まで振り回されてばかりだ。

今日この頃。
突然後見役に就いた頃。
桐生さんが居なくなったあの頃。

遡れば初めてその姿を見た遠いガキの頃も……つか、アレ初恋だったんじゃねえか……?

はたと気付いてベンチに座り込む。凹んだ。マジに凹んだ。思い出してはならないことを思い出してしまった。そうあの頃、たまたま見たスミの入った背中と肩越しにかち合った視線を忘れられずに護衛付き(主に柏木さん)で神室町を歩き回って捜していたのだ。考えてみると柏木さんの事だから、あえてあの人に遭わないように誘導していたんだろう。暫く続けていたが、いつの間にか諦めたんだった(ここらへん全部捏造マイ設定(笑))。


「はぁ……。」

「にいさん、どうかしたのか?」

「あ?」


どこか物悲しいメロディを奏でるギター弾きが、心配そうな眼差しで俺を見ている。こんな夜中に独りこんな所に座り込んで暇を持て余す堅気に気遣われるほど、俺は情けない顔をしているんだと、妙に納得してしまった。


「ああ、まぁ、ちょっとな。」

「煩かったら退くけど……。」

「いや、いい。続けてくれ……律義だなアンタは。」

「え?」

「こんなのが来たら、普通何も言わずに去るんじゃないか?」


代紋を指差す俺をまじまじと見て、ギター弾きは、そうかもねと頷いた。


「でも何となく、にいさんは独りになりたくなさそうだと思って。」

「……。」


「あ、気、悪くした?」

「いや、しない……確かに独りになりたくない……に近いか。」

「何か、あったのか。」

「ああ、ちょっと……人を待ってんだ。多分来ないだろうけど。」




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