QUIZ MAGIC ACDEMYの話
□未来の一例
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「まさかテメーがオレを追っかけてくるとはな……オレって愛されてる?」
「僕はお前を捕らえるために“黒犬”になったということだけは言っておこう」
「学生時代だったら真っ赤になって否定してたのにな。可愛げのねえ」
「何年経ったと思ってる」
セリオスの表情は能面のように始終変わらない。今日会ってからずっと表情を描かない。
レオンは思う。
“笑えばもっとキレイなのに”
それは、初めて会った、あのアカデミーのゲートで会ったときと同じ思いなのに。
(切り替えろ、ここはもうアカデミーじゃねえ)
「ちなみにどこで聞いた?その“黒犬”って」
「お前の仲間からだ。陛下の御演説中、不穏な会話をしていたな。もう首都に送られたが」
「バカ……!」
レオンの所属している組織も、比較的大きいとはいえ人的被害は痛い。任務に、組織そのものに、何より仲間の心に。
反政府組織である。捕まったら拷問も辞されないだろう。そして情報を絞れるだけ絞ったら……死刑。
二度と会えなくなったのは、彼か彼女か誰なのか……確かめるためにも、彼はこの場を逃れなければならない。
深刻な会話を重ね、軽口を叩きながら、二人はその場を動かない。
動いているのは炎と空気と髪と服……そして魔力。
この空間では巨大な魔力が二つ、それぞれ複雑に練り上げられつつあった。