賜り物

□水波 様からの賜り物
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ぱたん。確認し終わった帳簿を閉じて今日幾度目かしれない溜息をつく。
ほんとなら今日は何か月ぶりの休みが貰える筈だった。それから、二人で出かけに行く筈だった。
(まあ、任務の務の字を言い終わる前にうけるって言ったのは俺だけどさあ)
ひっさしぶりのAランク任務がまさか溜まりに溜まった帳簿確認なんて、誰も思わないって。
「はぁ―あっ」
満面の笑みで帳簿の束を差し出して賭博場へ姿を消した五代目火影が恨めしい。窓の外はもう真っ暗。当たり前か。
「……帰ろ――っと」
帳簿を執務室の机に軽くたたきつけて、帰路を辿った。
流石に師走も中頃になれば明け方暮れ方には耳が痛い。鼻の頭もつんとなる。悴んだ指先を暖める息も霜月の中頃には白かった。
「さみぃ―……」
街には赤と緑ときらびやかな電飾が溢れんばかり。
ああ、こんな日に俺はなにやってんだか。失態だ。情けないやら悲しいやら寒いやらで鼻水もでる。
(ちゃんとプレゼントも買ったのにさ!)
アイツだってこの日のために相当苦労して時間をつくった筈なのだ。仕事が入ったと告げた時の落胆したそうかと言う声にはほんとに心がいたかった。
散々自分をけなしながら最後はずるずる足を引き摺って部屋まで歩く。誰もいない家に帰るのはひどく億劫で骨が折れた。そんな風に思えるのは(数年前までは平気だったのにな)ある意味幸せなのかも知れない。
やっとの思いで扉が見える位置まできて、眼を疑った。
(誰かいる……!)
闇のこごったそこに人影が見える。よっぽど暇じゃ無ければこんな日にわざわざ俺の家にくるひとなんていない。
まさかと逸る気持ちに歩調が早まる。
「―、我」
「遅い」
「………なんでェ―……!?」
こうなると脳内はパニックだ。待たせたことを申し訳なく思わなければならないのだろうが、俺の脳味噌はこの状況をすんなり受け入れられるほど賢くはできていない。
駆け寄ってよくみれば彼の鼻の頭も耳の先も赤く冷たくなっている。気になるのは彼がどれだけまっていたのかで。それよりも疑問なのは、何で彼がいるんだということで。
「………あ、えと「寒い。」
「あ、そうだ、よな……ごめ「取り敢えず家に入れてくれ。」
「………はい」
頭の中の整理も済まないまま生活感たっぷりの汚い部屋を開ける。
「あの、散らかってるけど」
「良い。……邪魔する」
(こんなことになるんだったら片付けとくんだったってばよ……)
こちらが恥ずかしさに顔を熱くしているのも気にせず、彼はさっさと入って行き炬燵に腰をおちつけてぼーっとしている。
彼がこういう事に全く頓着しない気性なのはほんとに有り難いと初めて思った。

*

晩飯は食べたかと聞けば未だだと言ったので冷蔵庫を開けてみると気持ち良いくらいに何もなかった。こんな時ばかり自分の食生活を恨んだが他にどうしようもなく、いつも通りカップ麺を出して無言のまま二人で啜った。食べ終わると我愛羅はスープの表面の油をつついてつなげ始める。
その動作がまるでふて腐れているようにみえて自己嫌悪が募る。

七面鳥なんかない。
ケーキもない。
会話も、ゼロ。
なんて色気のないクリスマスだろうか(あっても困るけどさ)。

「今日、ごめん。それから、きてくれて嬉しいってばよ…」
謝るのにこんなに言葉が少ないのを後悔した事はない。感謝するのにこんなに沈んだ気分だったこともない気がする。ああ、俺ってば何やってんだ。
半分泣きそうになっていると、カップ麺のスープをかき混ぜてその水面を見つめる動作をくりかえしていた我愛羅の、それまで噛み合わなかった目線がはたとこちらをみてくれた。
そうして数秒。

「俺は、逢えたら、それで…」

尻切れ蜻蛉にとぎれとぎれ言った後、心なしか赤い頬と下がった口角。それを隠すためか再びスープをかき混ぜ出した我愛羅は堪らなく愛しくて。きゅうと抱き締めたら寒かったんだぞとだけいってすぐ背中に手が回された。
窓のそとは、


雪明かりが満たす空
(来年はちゃんとケーキ買ってくる)
(カップ麺で、いい…)
(俺がやだってばよ!)







*

はいお疲れ様でした。
わー、ありがちなネtゴプッ>゜.・。(Д(⊂=(∀`)
綱手影の功労者。
綱手様からのクリスマスプレゼントは我愛羅です!
やったね!>(・∀・)
Malnutrition:水波(081224)
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