短編集「紅蓮」
□悪戯【完】
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誰かが近くでコソコソ話をしていたら、すぐ自分だと思う。
『YES』
実際に自分のことを言われているか気になる。
『YES』
他人は嫌いだけど自分も嫌い。
『YES』
死にたいと何度か思ったが、死ぬ勇気がない。
『NO』
この心理テストは何を言わせたいのだろう?学校に設置されている心の相談室からの簡単な質問用紙が配られた。
学校生活や友人、勉強、交際についての項目が並ぶなか『心の悩み』に目を留める。
俺は窓際の一番前の席でぼんやりとクラスの奴らを見渡していた。
殆どは書き終え、昨日のお笑いやタレントの話に盛り上がっていた。
問題のない人生。
きっと笑いながらしゃべっている人たちには大した悩みがないんだろうな…。
だけど、俺は一人の少女に目がいく。
彼女は加賀 ゆう子。
加賀さんはクラスで一際目立っていた。
素行が悪いとかイジメの対象になっているとかじゃない。
一度も笑ったことがなく、誰かと仲良く話している姿はどこにもない。
浮いている、といえば俺もだが。
彼女には特別惹き付ける素材があった。