短編集「紅蓮」
□螺旋階段〜彼女と彼の関係〜【完】
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私は蔵野 みやび。
学力は中間くらいの県立高校に通っている2年生。
人見知りが激しく、よく友人からおとなしいと言われるけど・・
幼馴染の同級生には本当の私を出せるっていうか・・ありのままでいられるんだよ
ね。
「コウは進路決まった?」先週金曜に配られた進路希望の紙を見つめながら私は訊ねる。
「わかんね。やりたいことは色々あるけど、それが後先失敗しただなんて後悔したくないからな。」
国角 考は私の幼稚園からのくされ縁で、学年でトップ10には必ず入る勤勉家でもある。
「そっか・・。」
私は漠然とした未来に何も期待していないし、よく言う「夢も希望もない。」寂しい人間かもしれない。
夕方の帰り道だから余計虚しい気持ちになりながらも、コウに近所の行きつけのクレープ屋さんで奢ってもらった。
「みやびってよく甘いもん食べるのな・・。」
たいしたもんだとコウはチョコ&いちごクレープを頬張る私を見る。
「おいしー!」
甘いもので心が満たされるなんて幸せ。
こんな普通の日常のままでずっといたいなんてあり得ないものなんだろう。
ちょうど次の信号がみえた時だった。
重たそうなスポーツバックを抱えた同級生の男子をみかける。
クラスで人気者の金沢 伸二君だった。