第弐図書室


□水面花
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 態とらしく冷たい声を掛けて、私は踵を返した。
 けれど智士が静かに腕を引いて、その足を止められる。

 仕方無く、気休めの言葉を並べる事にした。


「……お風呂にでも入ってるんじゃない?」
「それは無いな。
 あいつ、夜の風呂場は怖いって言って、風呂は昼間に済ませるんだ」
「じゃあ寝てるとか」
「まだ九時だぞ」


 私は自分の何処かが苛立っているのを感じる。

 それは彼の心配そうな表情そのものの所為なのか、安心させようと折角掛けた私の言葉を否定するからなのか。


 それとも、自分の立場にいい加減疲れて来たからなのか。


「じゃあ他のオトコと一緒なのかも」
「そんな下らない事止してくれよ」


 眉間に皺を寄せて、明らかに苛立ちを声に滲ませる彼。

 きっと私がそれと同じ位、いえ、もっと苛立っているのには気付いていないのね。
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