第弐図書室
□a cigarette
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――あたしじゃなくちゃダメなの。
貴方の瞳に映るのは。
貴方の髪に触れるのは。
貴方の腕に抱かれるのは。
でなきゃ、この煙と一緒に消えちゃうんだから……。
「またタバコ吸ってんのか!?」
部屋のドアを開けて、葉ちゃんが叫んだ。
ここは葉ちゃんの部屋。
あたしは受験勉強を見てもらう為、土曜の度に此処へ来る。
「ちゃんと窓開けてるし、携帯灰皿も持って来たよ?」
まだ長いタバコを勿体ないとは思いながら、すぐに消した。
葉ちゃん、タバコ嫌いだもんね。
「窓を開けても、匂いは残るの。第一、お前は未成年だろう」
葉ちゃんが溜め息を吐いて、コーヒーを置く。
その話は面倒だから、あたしは聞こえないフリをしてやった。
「で、今日は日本史だっけ……」
予めテーブルに出して置いた教科書を、葉ちゃんが頭を掻きながらパラパラとめくった。
あたしはその間に、何度も来ているこの部屋を改めて見回した。