過去短編小説

□ファースト・ラブ 〜フレンズ〜
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 彼女の手首にキラリと輝くブレスレットを見たとき、俺の恋は終わりを告げた。



【ファースト・ラブ 〜フレンズ〜】



 場所は都内の喫茶店。そこで俺は一杯のコーヒーを飲みながら、バンド仲間を待っていた。


 店内に掛けられた時計をチラリと見やれば、待ち合わせまでは後数十分もあることを示している。

 そろそろコーヒーも無くなりそうだったので、おかわりを注文しようとウェイトレスに声をかけるため口を開きかける。それとほぼ同時に知り合いに似た人物が目の前を通り過ぎたので、思わずその人に声を掛けていた。

「空?」
「え? …ヤマトじゃない! どうしたのこんな所で」
「俺はちょっと待ち合わせ。空は?」
「あたしも待ち合わせ。……と言っても、早く着きすぎたからちょっとここで待とうかと思って」

 苦笑気味に笑う空だが、その顔にはつい数日前まであった焦りや不安が消え、喜びと幸せの色が浮かんでいた。それが空を何倍も綺麗に見せていることに、本人はまったく気付いていないだろう。


 この世の幸福を一身に受けているような幸せ全開の笑顔で、空は笑う。


「ヤマトったらぼーっとして。一体どうしたの?」
「いや……ちょっとな」

 空に見惚れていた、と言ったらどういう反応をするのだろうか。そんな取りとめもないことを思ったが、俺の口は違う言葉を零す。

「待ち合わせまで時間があるんだったら、一緒にお茶でもしとかないか?」
「え…? でも、ヤマトも待ち合わせ中なんでしょう?」
「俺もまだ待ち合わせまで時間があるんだ」
「そう? だったらちょっとだけお茶しようかしら」

    
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