過去短編小説
□ファースト・ラブ 〜スモール ラブ〜
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風呂上りの一杯にアクエリアスを飲んでいると、真剣な顔をした妹がおれに近寄ってきた。
「ねえ、お兄ちゃん」
「んー? なんだー」
「既成事実をつくるには、やっぱり夜這いをした方がいいと思う?」
その瞬間。
おれは盛大にアクエリアスを噴き出していた。
【ファースト・ラブ 〜スモール ラブ〜】
盛大に噴き出した後、しばらく咽ていたおれは目の端に浮かんだ涙を拭う。妹のヒカリを見れば、慌てたような表情でおれを見てくる。
「お兄ちゃんっ、大丈夫!?」
「だ…っ、大丈夫だ……」
取り合えず手に持っていたコップをテーブルの上に置き、呼吸が落ち着くのを待つ。
そして、ゆっくりとヒカリの方へ視線を向けた。
先ほどの犯罪スレスレな言葉がおれの聞き間違いであることを祈って、ヒカリに聞き返す。
「……で、なんだって?」
「だからね。既成事実をつくるには、やっぱり夜這いをした方がいいと思うか、ってお兄ちゃんに聞いたの」
「ああ…既成事実ねー。それに夜這い……」
やっぱり聞き間違いではなかったらしい。ついつい台詞も棒読みになってしまう。