novel
□crazy for you(前編)
2ページ/4ページ
あれから、星野は何度かうさぎに聞き出そうと試みたが、なかなかタイミングが掴めず、結局、昼休みになってしまった。
スリーライツの3人は中庭で大気特製のサンドイッチで昼食を取っていた。
「で、月野に何したの?星野。」
夜天は、サンドイッチを選びながら直球で星野に聞いた。
「だから、俺は何もしてねーよ!!」
食べながら、反論する星野。
「なに言ってるの。あの月野があんなに怒ってたなんて・・・・・・・星野・・・・・まさか・・・・ぅゎ…信じらんない…」
夜天はなにかを想像し、引いている。
「んな訳ねーだろ!!!!勝手に想像するなよ!!」
「止めなさい…;;;」
大気は呆れていた。
昼食を済ませ、コーヒーを飲みながら、大気が続けた。
「じゃあ本当に心当たり無いんですね…」
「ああ・・・さっぱり。」
星野はため息をついた。
「でも・・・なにか知らないけど・・・俺が原因でおだんごを怒らせた訳だから・・・謝るよ・・・」
「星野・・・」
急に落ち込んだ顔を見せる星野に大気と夜天は顔を見合わせた。
放課後になり、皆が帰った後、うさぎは誰もいない教室に呼び出され、ドアを開いた。
「よう。」
教室の中には星野がいた。
「セイヤ・・・」
うさぎはそっと教室の中に入った。
「なに?教室に呼び出して・・・」
目を合わせないうさぎに星野は寂しげな表情でうさぎを見た。
「その・・・ごめん・・・」
「えっ・・・」
「おだんごが何に怒ってるのか、知らないけどさ・・・俺がお前を傷つけた事には変わりないから・・・謝るよ・・・」
寂しそうな顔をした星野を見て、うさぎは戸惑いながらも口を開いた。
「あ、あたしも・・・今朝は・・・ごめん・・・急に怒鳴ったりして・・・どうかしてた・・・」
うさぎはどこを見ていいか分からず、下を向く。
「話してくれよ・・・それが聞けなきゃ俺、すっきりしねーよ。」
暫し沈黙の後、
「・・・だって・・・なんか腹立っちゃって・・・」
うさぎは小さな声で言った。
「えっ・・・」
「昨日・・・・・・セイヤが出てるドラマを観たの・・・」
「ドラマ・・・?・・・」
星野は思い当たる節を頭の中で探した。
ー!!?あっ・・・まさか・・・??・・・;;;−
今、星野は月9の視聴率25.5%という人気絶頂のドラマに出演している。
そして昨日の回、相手役と結ばれる話の中にキスシーンがあった。
ーあ、あれを・・・見たのか・・・??;;;−
「観たって・・・き、キスシーンの事・・・?;;」
冷や汗をかいてうさぎの様子を伺う。
すると、うさぎの肩が僅かに震えていた。
「演技だって・・・わかってるよ・・・仕事だからしょうがないってわかってるのに・・・・・・・・・あたしの知らないセイヤなんだなって思ったら・・・なんか・・・苛ついちゃって・・・」
「えっ・・・」
星野はうさぎがそんな風に思っていたとは知らず、驚いた。
「おだんご・・・その事で・・・怒ってたの・・・?」
「だって・・・・・・どっちが本当のセイヤかわかんないんだもん・・・嫌なの・・・見ててすごい嫌だったの。
・・・それに・・・相手の人だって、すごい美人な人だし・・・ごめん、なんか言ってることめちゃくちゃ・・・」
俯きながら、必死に自分の思いを伝えようとするうさぎを見て星野は、胸を撫で下ろし、微笑んだ。
「そっか、・・・おだんごヤキモチ妬いてくれたんだ。」
「や、ヤキモチなんて・・・」
うさぎは少し顔を紅くし、顔を上げて星野を見た。
「やっと俺の顔見た・・・」
星野は優しくうさぎを見つめ、うさぎは目を逸らせなかった。