おお振り

□キタナイ体
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※榛阿前提の花阿。








「花井。もう帰れよ」
阿部はぶっきらぼうに口を開いた。部活が終わりメンバーも帰って部室には鍵当番の阿部、と阿部を待っている花井。
「…待ってるよ」
阿部の隣に座り部誌を書く阿部を見つめながら花井が呟く。阿部がため息をついた。
「お前さ」
阿部がどこか遠くの方を見る様な目で言った。
「俺のこと好きなの?」
一瞬花井の動作が止まった、が、即座に答えた。
「うん。好きだよ」
当たり前、というような花井の反応に驚き阿部が花井の方を見て目を丸くする。花井が頭をかきながら尋ねる。
「なんで分かったんだ?」
「……一週間も前から急に、一緒に帰ろ、とか言われてたら気付かねぇ方がおかしいって。部活の話かと思ってたらそんなんでもねぇし」
阿部が部誌をパタンと閉じて立ち上がり、花井の方を向いた。
「俺はやめとけ」
阿部の一方的な言葉に花井が眉を寄せる。
「阿部俺のこと嫌い?」
花井も立ち上がる。
「嫌いじゃねぇよ」
「じゃあなんで?」
阿部が俯きチッと小さく舌打ちをした。
「…知ってんだろ。……榛名のこと」
花井は当然の様に答える。
「知ってる」
阿部はまたハアッとため息をつく。
「じゃあどういうことかわかんだろっ…」
「わかんない」
そう答えると花井は阿部にずんずんと近づき肩を掴んだ。
「なんでそんなこと言うんだ?昔だろ」
「昔とか関係ねぇだろ!」
阿部が声を張り上げ花井の手を払う。
「…汚れてんだよ、俺の体」
花井は怯むことなく再び阿部の肩を掴む。
「やめろ!」
ハァハァと息をあがらせ何とも言えない表情で訴えてくる阿部。
「汚れてんだって!キタネェんだって!」
阿部の声をもろともせずに花井は阿部にますます近づく。
「わかんねぇのかよ!」
「全然わかんねぇ」
言い争っているうちに阿部を部室の隅に追いやった。すると阿部はハァハァと荒い呼吸をしながら着替えたばかりのカッターシャツを脱ぎ始めた。花井は黙って阿部を見つめる。シャツのボタンを外してバッと広げる阿部。中にはいくつもの痣や傷が残っている阿部の体があった。
「見ろよ」
「見てる」
「キタネェだろ」
「野球で付いた傷だろ?」
阿部が首元の傷を指す。
「よく見ろよ」
「……見てるって」
「これが野球で付いた傷かよ」
「………なんでそんなこと気にするんだ?」
歯型の様なクッキリと痛々しく残った阿部の首の傷痕を指でなぞり尋ねる花井。
「俺は今の阿部が好きなだけだ。過去なんて関係ない」
花井が阿部の体中の傷痕を愛おしそうになぞりながら言う。阿部は俯き肩を震わせる。
「……俺…そんな価値ねぇよ…」
阿部の奮えた声に花井が阿部を優しく抱きしめる。
「お前の価値は俺が決める」
「…汚れてんだ…」
「汚れてねぇよ」
「キタネェ体…」
「…全然汚くねぇ」
花井は奮える阿部の頬にキスをした。

「お前はキレイだ」
















End.


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