おお振り

□しるしの付け方
1ページ/1ページ







練習が終わってしばらくしてみんなが帰った後の静かな部室で阿部くんと二人きり。
「ちゅっ」
阿部くんがまた俺の首に吸い付いた。
「…っあ」
いつも思わず声が出てしまうんだ。何故かはよくわからないけど阿部くんの唇が触れた部分がチクッて痛むんだ。
「…何…してるの?阿部くん…」








しるしの付け方






「何って…キスマーク付けてんの」
き、きすまーく?女の人が付けるような口紅の真っ赤な跡のこと…?
「キ、キスマーク…って、何?」
恐る恐る聞いてみると阿部くんに笑われた。
「お前キスマークも知らねえの?」
阿部くんに笑われて少し恥ずかしくなって黙ってしまう。
「…"三橋は俺のモノ"ってことを周りに分からせる為に付けるんだよ」
お互いの息がかかる位近くでそんなことを言われると嬉しいけど恥ずかしくて…。
「…あ…でも、あ、阿部くんも、俺のモノ、で、す…」
真っ赤になりながら言うと阿部くんは一瞬驚いた顔をしてすぐに嬉しそうな顔をして言った。
「…そうだな。俺もお前のモノだ。」
そう言うとまた俺の首に口元を持っていく。
「あ、待って、阿部くん」
俺は阿部くんの行為を制止させる。
「俺も、その、キス、マーク、付けたい。」
今頃顔が真っ赤なんだろうな、なんて思いながら阿部くんに訴える。阿部くんはキョトンとした顔をして俺を見つめている。
「そのっ…キスマーク…の、付け、方、知らなくて…」
阿部くんは俯くと肩を震わせてくすくすと笑い始めた。何かおかしいこと言ったかな、俺…。落ち着かなくてオドオドしていると、
「…三橋がまさかそんなこと言ってくるなんて思わなかったよ」
と阿部くんが言って顔をあげた。そこには見たことないくらい真っ赤な阿部くんの顔。つられてますます顔が赤くなっちゃいそうだ。
「いいよ。付け方教えてやるよ」
そう言うと俺の左腕を取り出してアンダーをぐいっとめくり、普段は日光にさらされていない為か白く透き通っているそこに唇を押し当てた。するといつもは首に感じていた、あの痛みがピリリと腕に走った。
「…っ」
思わず息を飲む。痛みが収まったかと思うと阿部くんはペロッとその場所を舐めた。甘い痛みに身体がどうしようもなく疼いた。
「…ほら、付いた。」
阿部くんが唇を離すとそこには小さくて赤い痣の様な跡が付いていた。ちょっとしたことなのにまだ付けられた場所が疼いている気がする。どうしようもなくその赤い跡がいやらしく見えてしまって俺は赤い跡から思わず目を逸らした。
「ほら、お前もやってみな」
阿部くんは腕まくりをして腕を俺に差し出した。俺は奮える手で阿部くんの腕を取って、恐る恐る唇を近付けた。俺の唇が阿部くんの腕に触れると阿部くんの腕がピクッと動いた気がした。
「……思いっきり吸ってみな?」
阿部くんの腕を、阿部くんが言った通り吸ってみる。ゆっくり強く吸いながら阿部くんの方を見る。
「お前…そんな上目使いすんな」
「っ……?」
阿部くんに目線を外されてしまった。ああ、また俺がちんたらしてるから…呆れられちゃったのかな…。しっかりやらなきゃ!
俺は思いっきり阿部くんの腕を吸いあげた。すると
「……っ、おま、強く吸い過ぎ」
と顔を歪ませた阿部くんに言われた。ああ…また俺、阿部くんに呆れられた…。
「ご、ごめん、なさいっ」
慌てて阿部くんの腕から唇を離すと阿部くんの腕に深い赤色の模様が出来ていた。
「…すっげぇ。濃く付いたな。」
阿部くんがまじまじと自分の腕の模様を眺める。俺は阿部くんに付いた痣を見てるとなんだかいたたまれなくなって俯いていた。
「お前気付いてなかったみてぇだけど、俺いっつもこんな跡お前の体に付けてんだぜ?」
阿部くんに言われて体温が上昇するのが分かる。
−−−オレノモノ。
そうだ、この跡は阿部くんが俺のモノだって証なんだ…。
改めて考えるとすっごく恥ずかしいけどすっごく嬉しくて。阿部くんの腕を嬉しそうに見つめていた。
「ホントはこんなとこに付けねぇんだけど」
阿部くんがボソリと呟く。
「今のは練習だろ?今度はちゃんと首に付けろよ。」
れ…練習だったのかあ…。阿部くんの首にまたさっきみたいに跡を付ける。考えただけで顔から火が出そうになる。でも、阿部くんが俺のモノだっていう証になるんなら…。
「じ、じゃあ…し…失礼します。」
頭をペコッと下げるとゆっくり阿部くんに顔を近づける。自然と阿部くんの上に跨がる体勢になって体が触れ合う。なんだか皮膚が溶けてくっついちゃうような気がした。阿部くんが頭を少し上にあげた。首を少し曲げて阿部くんの首に唇を寄せ、吸い込んだ。まるで阿部くんの全部がここから吸えそうな感じがした。必死に唇に力を入れていると、肩にチクッと痛みが走った。
「俺も付けてやるよ」
阿部くんが俺の肩にいくつも跡を残していく。強く吸い痛みを与えては舌で舐めて甘い刺激を残す。そして違う場所にまた痛みを与えた。
「〜っ……」
俺はずっと阿部くんの首に食らいついたまま、肩から流れてくる甘い刺激に堪えていた。阿部くんがやっと行為を辞めると、俺も阿部くんの首から唇を離した。そこには色濃く真紅の跡がただひとつ残っていた。
「すげ−吸ってたな。あんまり吸うから痺れたぞ」
阿部くんが笑いながら首を撫でている。と、阿部くんの顔が歪んだ。あれ、また俺、阿部くんを怒らせ…て……ってあれ………?天井が見えた…………。

俺はそこで倒れてしまった。





しばらくすると目が覚めた。ハッとして起き上がると阿部くんが隣に座っていた。
「大丈夫か?お前、いくらなんでも息継ぎはしろよな…」
どうやら俺は夢中で阿部くんの首を吸っていて息継ぎを忘れ、酸欠になったらしい。小さな声で「ごめんなさい」と謝ると「怒ってね−よ」と頭を撫でられた。





次の日。
「あ〜!阿部!首にキスマーク付いてる〜〜!」
田島くんが部室中に響き渡る様な大きな声で叫んだ。あまりに心当たりがありすぎて体がビクッとなる。
「ね〜!誰に付けられたの!?ってかすげ−強く吸われてる!!」
田島くんの声にガクガクと奮える。バレちゃったかなあ…どうしよう………。
「ん?なにがなんだって?」
阿部くんが田島くんにニタァ…とあの怖い笑顔を振り撒く。田島くんが「何だよ−教えろよ−!」と迫っているけど阿部くんはツーンと聞こえないふりをしている。よかったあ……阿部くん、バレないようにしてくれそうだ。ホッと安堵していると
「あ−!!みはしっ!みはしまでキスマーク付けてる−!!!」
と田島くんが俺に指を指してきた。着替えの途中で肩を露出している最中に見つかってしまい、突然のことに体がビクつき、頭が真っ白になった。田島くんがズカズカと近づいてきて「誰!?誰!?」としつこく聞いてくる。俺は涙目になりながらパニックを起こしていた。阿部くんに助けを求め様と目線を送っても、気付かれずスタスタと部室から出ていってしまった。田島くんに捕まった俺は、相手が誰なのかをその日から一週間も毎日聞かれる羽目になってしまった…。これからはお互いバレないところに付けなきゃ……ね、阿部くん?
















end
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ