赤の魔闘師

□#11〜15
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人ダ…人ヲ捕マエタ…
シカモ、二人モ…
強イ、魔闘師…
逃ゲ、ラレタラ、ドウスル…
モう、我等の腹ノ中…逃げラレは、しない…

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広い広い庭と長い長い廊下を越えた末に二人が通されたのは絢爛豪華という形容詞が全くもって相応しい部屋だった。
そして中央にはこれまた豪華なご馳走の乗せられた長机が置いてあった。
「うわぁ。」
「これは?」
セーリウスは目を輝かせ、ソルキスはまだ冷静に状況を問うた。
「いやいや、この城に住む一族は客人を遇すことを好むのですが、何分こんな辺境では訪れる人は少ない。久方ぶりの来客に皆喜んでおるのです。」
大柄な男は一通り説明して、二人を残して立ち去った。
「食べていいんだってさ。」
「後でお金払えとか言われないよね?」
「平気だろ?」
「だよね。」

二人はしばらく顔を見合せた後、目にもとまらぬ速さでご馳走を平らげ始めた。



赤の魔闘師 〜力を宿すモノ〜
  向こう側の向こう側



「おいしかったね。」
「こんな旨いもん久々に喰ったって。」
二人はぽっこりと膨らんだ腹を擦りながら深々と椅子に座り込んだ。
「ご満足いただけたでしょうか?」
さっきの大柄な男が優しげな笑顔で二人に問うた。
「満足どころじゃねぇ、大満足だって。」
「ごちそうさまです。」
二人はうまく動かせない体を捻って礼を言った。
セーリウスは無礼にあたらないかとひやひやしたが、杞憂に終わったようだった。
「それはそれは、ありがとうございます。お部屋をご用意いたしましたので、どうぞお休み下さい。」
大柄な男は感情を忘れたように淡々と言い終えると広間を出て行った。それと入れ違いに何人かの小間使いと思われる少年が部屋に入ってきた。それなのに優雅な仕草で二人分の荷物を持った。
「お部屋へご案内いたします。」
その内の一人が二人の前に立って言った。
「…なんか俺達、貴族にでもなったみたいだな…。」
ソルキスはちょっと困ったように顔をしかめた。
「何言ってるの。赤の族長の長男に生まれておいて。」
セーリウスはそう言ってソルキスを見やった。
「…それは俺じゃないって。」
ソルキスは気まずそうに下を向いてしまった。
「どうぞ、こちらへ。」
「わかったって。」
少年に促されるまま、二人は部屋を後にした。

∧∨∧∨∧∨∧∨∧∨

案内された部屋もまた豪華だった。詳しく説明すると、煌びやかな壁には大きな額縁に入った絵が飾られ、天井からは光り輝く燭台が提げられ、床は立ったままでも顔がはっきりと映るほど磨き上げられている。
そして極めつけは輝くような金の刺繍が施された豪華な天蓋付きの寝台が部屋の中央、ちょうど朝日の当たる場所に置かれていた。
「寝るのがもったいないね。」
「床で寝た方がよく寝れたりしてな。」
冗談を言い合いながら二人は同時に全く違うことを考えていた。
(なんで寝台一つなんだよ?)
(どうして寝台が一つなの?)
二人とも同じ顔をしてしばらくの間つっ立っていた。

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ノクス様…マダ、デスカ…
「……まだ。もう少し待ちなさい…。」
デモ、奴ラハモウ寝タ…イツデモ、喰エル…
「……まだだと言っているでしょう…。……もっと深く、意識を暗闇に落としこんでから……。」
暗闇ニ落チタ、魂…
我等二姿ヲ…ノクス、様…
「……我が<夜>の名において…お前達に姿と心を……。」

カタチなきモノはカタチを求めて
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