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□憂鬱バレンタイン
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「浮かない顔をして、一体どうしたんです?」
そう言った平はさっきから実にいい笑顔だ。
「わかってて聞くな。」
その一方で源はまた一段と肩を落とした。
「そうですか。そういえば、今日は北条と一緒じゃないんですね。」
平は今気が付いたというように辺りを見回した。
「することがあるから先に行けってさ。お前こそ直晴とは一緒じゃないのか?」
もうどうにでもなれという風にぶっきらぼうに源は言った。
おそらく、今日一日彼はこんな感じだろう。
「さぁ?今日はまだ会っていませんよ。」
そもそも約束をしているわけではありません、と念を押すような平の言い方に源はそうだよな、と軽く相槌を打った。
少しして、平は源に本当に今日は一つもないんですか、と問いかけた。
何が、かは言わずもがなだ。
「何もねぇよ。なんだよ、そんなに勝ち誇りたいのか?」
源はいろいろと限界に近かった。
「いえ、貴方が一つも貰わないというのは不思議だと思いましてね。」
平はそう言うと源の前に立って真っ直ぐに源のことを見た。
「見た目もそう悪くありませんし、成績の方も英語を除けば常に学年上位、運動神経に関しては言うことなし、クラスでの支持率も高い。想いを寄せる女性が一人ぐらいいてもいいと思うのですが…。」
「お前マジでケンカ売ってんのか?」
源は震える拳を握りしめた。
平は真剣に話しているのだが、源は自分がからかわれているとしか思えなかった。
どこかから誰かの悲鳴が聞こえてきた。