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□カメ騒動
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「頼むトキ、お前だけが頼りなんだ。」
源は椅子に座って本を読んでいる北条の前に立って、手を合わせて頼み込んだ。
「源さん、その‘お前だけ’って僕で一体何人目ですか?」
知っているんですよ、と微笑んだ北条の笑顔はいたってにこやかだが、何分オーラが黒い。
「あ、いや、その…。今回はマジでお前だけだって。」
さらに低く頭を下げた源はやや上目遣いに北条の様子を伺った。
「…仕方ありませんね。」
北条はため息を吐いて開いていた本を閉じた。
「で、頼みって何なんですか?」
下らないことなら承知しませんよ、とオーラが語っている。
「ちょっとだけミドリを預かって欲しいんだ。」
これでもかというほどの笑顔で源は言った。
「ミドリ…あのカメですか?」
滅多に崩れない北条の笑顔が崩れ、明らかに嫌そうな顔になる。
「そうそう。ちょっと用事があってさ、母さん爬虫類苦手で餌やり頼めなくってさ。」
お願いっと源はもう一度手を合わせた。
「…仕方ありませんね。」