赤の魔闘師

□#4〜10
1ページ/7ページ

ガタガタと揺れる馬車の中でソルキスとセーリウスは小さくなって座っていた。
「北の塔で、異変の真意を探れ、か。よく、引き受けたね。っうぁ!」
セーリウスはこけないように馬車の枠組みにしがみついた。
「北だけで納まりそうには思えなかったんだって。」
ソルキスはどこにもつかまっていなかったが、何故かこけることなく座っていた。
「なるほどね。それにしても、これ、揺れ過ぎじゃない?」
セーリウスは舌を噛まないように喋るのでいっぱいいっぱいだった。

「…山道はこういうもんだって。」



赤の魔闘師 〜力を宿すモノ〜
   旅の始まり



「あんなに揺れてたの初めて。まだ揺れてるような気がする。」
セーリウスはよたよたしながら近くの壁にもたれ掛かった。慣れない馬車で山道を揺られてきたのが相当こたえたらしい。
「そうか?確かによく揺れてる方だとは思ってはいたけど。」
ソルキスは一年間国中を旅していただけあって平気そうだ。
「もう馬車で山道なんて通りたくないよ。」
「直に慣れるって。」
「強いなぁ。」
二人は今夜の宿を探すべく街のなかへ繰り出した。

∧∨∧∨∧∨∧∨∧∨∧∨∧∨∧

「この街は旅人に冷たいって。」
「どこも泊めてくれなかったね。」
夕焼けが美しい丘に腰掛けて二人は途方に暮れていた。
「セーリウス、お前野宿平気か?」
「…多分、ね。」
このままでは野宿をすることになりかねないがそれ以外の方法が見つからないので、それより他にしようがなかった。
「って言ってもなぁ。街中で野宿なんて一番厄介だって。」
ソルキスは今までこういう経験をあまりしていなかったので難しそうな表情をして考え込んだ。
「あなた達もしかして泊まる所が無いの?」
暗いオーラを放つ二人に一人の少女が話し掛けた。
「誰?」
ソルキスは困惑顔で応えた。
「私?私はウェヌスタ。あなた達と同じで旅をしてるのよ。」
少女、ウェヌスタは言った。
「じゃあ、あなたも泊まる所が見つかってないんですか?」
セーリウスは仲間が見つかったのだと思い、少し笑顔になった。
「私はこの街に知り合いが住んでるからそこに泊めてもらうの。」
「そうですか、」
ウェヌスタの答えを聞いてセーリウスはがっくりと肩を落とした。
「そういうこともあるって。俺はソルキス、こっちはセーリウスだって。」
ソルキスはセーリウスを軽く慰めてウェヌスタに名前を教えた。
「ソルキスにセーリウスね。よろしく。良かったら一緒に私の知り合いのとこに泊まらない?」
ウェヌスタは二人に提案した。
「いいのか?」
ソルキスは多少乗り気なようだ。
「多分ね。知り合いは賑やかなのが好きだから。」
「セーリウス、どうする?野宿か、知らない人の家に泊まるか、俺はどっちでもいいけど?」
ソルキスはそう問い掛けてセーリウスの答えを待った。
「…野宿は嫌ですね。」
セーリウスはしばらく経ってから答えた。
「じゃあ決まりね。こっちよ。」
ウェヌスタは嬉しそうに言って路地の方に歩いていった。
「よかったね。なんとか寝られるところが見つかって。」
セーリウスも嬉しそうだ。
「今晩、熟睡するなよ。」
ソルキスは静かにセーリウスに言った。
「どうして?」
「すぐにわかるって。」
三人は暗い夜道を歩いていった。

温かな不安を抱き抱えたままに。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ