赤の魔闘師

□#11〜15
1ページ/5ページ

人ダ、人ダ…
人ガ来タ、ノカ…
二人、イル…
森ノ傍、ニ…
近付イテ来ル…
人ハ全テ、我々デ喰ッテシマオ、ウ…

∧∨∧∨∧∨∧∨∧∨

人気のない森のはずれで、はっきり言えば二人は途方に暮れていた。
「どーするって?」
「何が?」
適当に見つけた岩に座り、これまた適当に辺りを見回す。
「ここまで何もないといっそ清々しいね。」
セーリウスは乾いた地面に寝転んだ。
「不毛の地は伊達じゃないって。今日のメシどうする?」
「カバンもう空だよね。野兎一匹見当たらないし、嫌だけど抜くしかないかなぁ?」

ポツリ

「あ、」
「雨だって。」
呟いて二人はそろって上を見上げた。

ザアアァァァ

「これはまたひどい。」
「セーリウス、ぼーっと見てないで雨宿りするとこ探せって!」
ソルキスはカバンを抱え上げ森の中へ駆け込んだ。
「あぁっ、待ってよぉ。」

彼らが森に入っていくとたちまち雨は止んでしまった。

∧∨∧∨∧∨∧∨∧∨

湿った匂いのする森の中を二人は歩いていた。
「この森、なんかおかしくない?」
急にセーリウスが立ち止まった。
「おかしいって何が?」
ソルキスは休憩がてらカバンを地面に降ろした。
「だって、どこにもキノコが生えてないんだ。」
「この期に及んでキノコかよ。」
セーリウスは真剣だったがソルキスは呆れた。
「こんなに空気が湿ってるのに、コケも全然ない。」
「空気が湿ってるのはさっき雨が降ったからじゃ、」
「たったあれだけ降っただけじゃこんなにはならないよ。落ち葉の表面は乾いてるのに中の方は湿ってる、湿度も栄養分も充分でこんなに何もないなんておかしいでしょ?」
「お前腹減ると頭回るよな。」
主に食べ物を探すために。
「あっ、」
セーリウスはある方向を向いて動きを止めた。
「今度は何だって?青色の薔薇でも見つけたのか?」
ソルキスは体力的にも精神的にも限界を迎えようとしていた。
「あっちに道がある。」
「何だって?」
セーリウスが指差す方を見てみると細長く木の生えていないところがある。
「でかしたってセーリウス。お前今日からずっと腹減らしとけって。」
ソルキスはゆっくりした動作でカバンを背負うと道の方へ歩いて行った。
「お腹空くのは嫌だよぉ。」
セーリウスは少し遅れて小走りでソルキスついていった。



赤の魔闘師 〜力を宿すモノ〜
   雨の森の奥で



「なんていうか、」
「大きいね。」
二人は大きな門の前に立ち尽くしていた。見つけた小道を辿ってきた先にあったのだ。
「どうするの?」
セーリウスはついに空腹の限界が来たようで、その場に座り込んでしまった。
「こうしててもしょうがないって。入れてもらおうぜ。」
ソルキスは門の周りを見回した後、門の脇に小さな扉を見つけた。
「ここからなら行けそうだって。」
両手を添え、押してみるが扉は頑として動こうとしない。
「どうしたの?」
セーリウスは立ち上がり、よたよたと扉の傍まで歩いた。
「この扉固ぇ。」
ソルキスは扉から手を離した。
「そうなの?」
セーリウスはソルキスと同じように扉に手を置いた。
「無理だって。この扉きっともう何年も開いてないんだって、」

ゴッ、

「…え?」
「ホント、この扉何年も開いてないみたいだよ。葉っぱとかいっぱい詰まってる。」
ソルキスが振り向いた時には扉は開いていて、セーリウスが門の内側を覗き込んでいた。
「お前、そんなに力あったっけ?」
ソルキスの記憶では、セーリウスはどちらかというと非力な方だったはずだ。
「とりあえず、扉は開いたけど、このまま入ったら不法侵入だよね?」
「誰か出てくんのかって?」
二人はそろって扉から内側を覗き込んだ。
「門も大きかったけど、」
「中もやたら広いって。」
扉の内側にはだだっ広い庭が広がっていて、丁寧に手入れされた花壇や噴水が並んでいた。
「一体誰の庭だって。」
「絶対神に捧ぐ庭です。」
「へぇー。って、えぇっ!!!」
思わぬ返事にソルキスは飛び上がった。
「さっきまでいませんでしたよね?」
「周辺の見回りを仕事にしておりますので。何かご用でしょうか?」
大柄な男は機械的に少し的外れな答えを返した。
「簡単に言うと行き倒れ寸前?」
「それは言い過ぎだって。」
「それはいけません。どうぞ中へお入りください。お食事くらいお出しします。」
男は扉をくぐり抜けていった。
「とりあえずついていくって。」
二人は男に続いて中へ入っていった。

綺麗すぎる庭を越えて
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ