オリジナル部屋。

□FATHER or BROTHER?2
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寝る頃になって思う。

秋になった。

暑さはまだまだ残っているが、風や空はすっかり秋らしくなった。
今までとは違う虫の声が聞こえる。
寝付きはよくなさそうだが、静かな良い夜になりそうだと思った。

そんな矢先だった。

「いい加減にしろよ兄貴っ!!!」
俺はいつの間にか俺の布団に潜り込んでいた兄貴を思い切り蹴り落とした。
なんでこいつは人がいい気分の時に限って邪魔をしてくるんだ!
「秋の夜は淋しいんじゃないかと思って、兄ちゃん浩介のこと思っ…」
「ど真剣に俺のこと考えるなら数々の奇行を改めろ。」
毎度毎度俺の邪魔しやがって。
「兄ちゃんいつも浩介のこと考えてるぞー!」
あんたはそうでも全く俺のためになってないんだよ。
「俺寝たいんだから。出てけよ。」
「だったら兄ちゃんが浩介に素敵な夜をプレゼントしちゃうよ☆」
「火曜日(燃えるゴミの日)に出したろか。」
素敵な夜ってなにやらかす気だお前。どうせろくでもないこと企ててんだろ?何年一緒に生活させられてると思ってんだ。お見通しなんだよ。
「ひ、ひどいよ浩介。」
そう言って兄貴はうなだれた。垂れた耳と尻尾が見える気がするのはいつもの幻覚だ。
「兄ちゃんはなぁ、兄ちゃんはなぁ…ん?」
さっきまではいつもと全く一緒。でも最後だけ少し声の質が違ったような…
「浩介、ちょっと動くなよ。」
「え?」
気が付いた時にはもう兄貴は真剣な顔で俺のすぐ傍にいて、

― ドキッ ―

パチン
「蚊がいた。」
そう言って広げた手のひらには黒く潰れた蚊が一匹。
「ぇ、あ、うん。」
…なんだ今の。
「よかった。浩介が刺されちゃってたらどうしようかと。」
言いながら兄貴は全然離れる気配を見せない。
「さ、さっさと離れろよっ!!!」
俺は再度思い切り兄貴を突き飛ばした。
「あでっ。」
「もう勝手に部屋入んなよっ!!!」
兄貴は打った背中をさすりながら部屋を出て行った。


兄貴が出て行ったのを確認して俺は大きく息を吐いた。
なんだよさっきの。兄貴だぞ?あり得ないから。
…忘れよう。
俺は布団を被り直した。

布団の中はなんだか熱かった。

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