オリジナル部屋。

□トレン TREM (一話完結)
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「マズいな。」
「ひじょーにマズいっスよ。」
豊かな田園風景を走り抜ける電車の中で二人はかなり悩んでいた。
「これで何度目だ?」
「えっと…。今年五回目っス。」
二人は同時にため息を吐いた。
「まだ四月の終わりだというのに、」
「どうします?」
「いつも通りだ。」
「了解。」
丁度その時、一人の男が二人に近づいて来た。
「おい、お前ら何をこそこそと、ぐおぅっ、」
男は物凄い勢いで床に激突した。
「兄貴カッコイー!」
「アレグレ、嬉しいけど場の雰囲気も読みなさい。」
と言いつつも兄貴と呼ばれた男、クリアルはさっき殴り飛ばした男を掴み上げた。
満面の笑みで。
「さて、君達の目的は一体何だい?それと仲間はあと何人いるのかな?」
クリアルは女性が何人も気絶しそうな笑みを浮かべながら男を片腕で持ち上げている。怖いったらありゃしない。
「俺たちは<夜の影>だ。この国を変えるために活動している。」
男はびくびく怯えながら言った。
「あとのメンバーは?」
「十人だ。」
男の声は半分擦れていた。
「そうか、なら君には眠っていてもらおう。」
クリアルは男を降ろすと首筋に手刀を当てた。
「十人っスか、けっこう多いっスね。」
「この列車は八両編成だから、各車両に一人か。」
しばらくの間クリアルは図面を引くように指を動かしていたが、考えがまとまったのか、ニヤリと笑って手を下ろした。
「アレグレ、少し後から来なさい。私が先頭車両まで進むから気絶しているこいつ等のメンバーをロープで縛りながらついてきなさい。」
「ガッテンっス。」
アレグレの答えを聞くとクリアルは満足そうに頷いて車両を後にした。
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