オリジナル部屋。

□FATHER or BROTHER ? 4
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「モデル?」
今日は兄貴が変なことを言い出した。
いつものことだけど。
「このカットの小夏ちゃんの服がうまく描けないんだよ。なぁ浩介、デッサン付き合って!」
描きかけの原稿とスケッチブックを持って頭を下げてくる兄貴。
正直言って怖い。
「なんでまた急に…。」
「いつもなら部の仲間に頼むんだけどさぁ、締め切り明日なんだよ。ほら、浩介は兄ちゃんが編集長なの知ってるだろ?部長以上に締め切り破れないんだよ。」
兄貴はついに廊下に土下座し始めた。
っていうか明日締め切りで今下絵?無理じゃん。
「そのくらいなら別にいいけど?」
「ホント!!」

10分後、俺はこの判断を心の底から後悔することになる。

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「デッサン付き合うだけって…。」
兄貴は暢気にスケッチブックを広げ、鉛筆を新しく削っている。
「服の立体感がいまいちでな。そのあたりを手伝ってもらいたいわけ。」
だったら…、
「なんでこんな服着なきゃいけないわけ?」
今現在俺が着せられているのはマンガっぽくデザインされたセーラー服、至るところにレースやリボンが施され描きにくそうなのはわかる。だが、はっきり言って女子用の制服だ。着る覚悟を決めるのに37分かかった。
着てみると思っていたより丈が短く結構、っていうかかなり恥ずかしい。
「小夏ちゃんのパーソナルユニフォームなんだよ、そのセーラー服。なかなか似合ってんじゃん。」
「こんなん似合ったってちっとも嬉しかねぇよ。」
っていうかなんで持ってんだよ。
「それ上下あわせて三万五千円したから汚すなよ。」
なにそれ…。
「こんなんに三万も出すもんなの?」
「コスプレ用品は基本的に高いからな。自作だと安くあがるけど、難しいし。」
聞いてはみたけど正直どうでもいい情報だった。
「で、どうすりゃいいわけ?」
さっさとこの状態にケリをつけたくて兄貴に聞いた。
「んっとな、こんな感じでポーズとってもらえる?」
と兄貴はスケッチブックを広げて見せた。
…あえ?
「ちょっと待て。なんだよこのポーズ!!」
描かれていたのは大まかな線画だったがさすが文芸部と言うべきか、なんとなくでも絵の内容は伝わった。
つまり、右手でなにやら形を作り、左手を腰に、体全体に軽くひねりをくわえ…なんというか、月に代わってというか、とっととおうちにというかなのだ。
この気分を形容する言葉を俺は知らない。
「小夏ちゃんの決めポーズ。」
「聞いてんのはそこじゃねぇ!なんで俺がっ!!」
俺はたまらず悪態をついた。それ以外の方法が思いつかなかったから。
「浩介は兄ちゃんのお願い聞いてくれないの?」
兄貴は涙目でこっちを見てくる。俺が立って兄貴が座っているので(多分)自然と上目遣いになり、正直キモイ。
あの瞳にはいろんな意味で耐えられない。
「…30分経ったら終わってなくてもやめてやるからな。」
俺は折れるしかなかった…。
「浩介ありがとう。さすが俺の弟。」
「全然さすがじゃない!」
埋めるぞ、山に!
「じゃあさぁ、せっかくだしそのままキスのおねだりのポーズも、ぐふぅうっ!!」
「今度の燃えないゴミの日に出してやる!!」

…この馬鹿兄貴。

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