光の女神伝説

□Turnー14
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「あれ?ひかるは…?」


 いつもの放課後…杏子は教室にひかるがいないのに気がつき、辺りを見回す。

「ん〜?いないのか?」
「うん…」
「先に行っちまったんじゃないか?行くんだろあいつもデュエル・ディスク貰いに…」
「…帰っちゃったのかなぁ?ここのところ、気がつくといないのよね…」


 そのやり取りを遊戯は黙って眺め、心に問い掛けた。


(あれからなんかあったの?もう一人のボク)
『いや…特に…ただ…』

 遊戯のそばに半透明で現れた闇遊戯は顎に手を当てた。

(ただ?)
『…悩んでいるようだった、バトル・シティへの参加を』
(…そっか…)
『……(己の存在の意味について悩んでいるようだったが…)』
(どうしたの?)
『!…いや、なんでもない…』


 そう言うと、彼は意識を千年パズルへと消した。


「……」

「遊戯ー!」
「!」
「行こーぜ、カード屋」
「あ、うん!」

















 同じ頃、ひかるは一人童実野美術館の前に佇んでいた。


「……」

 ゆっくりと建物を眺め、中へと入っていく。








 立ち入りを禁じられた地下室へと静かに下りて行き、奥に安置された石版を眺めた。



「……」



「迷っているのですか?」

「!」

 唐突にかけられた声…ひかるが振り返るとそこにはイシズが立っていた。


「イシズ…さん」

 イシズはひかるの隣へ並ぶと石版を見上げた。


「…これから始まる戦いには、ファラオの記憶がかかっています…けっして負けられない、そして避けられぬ戦い…」
「…今も…昔も……あの人は戦っている…」
「…!あなたには、記憶があるのですか?」
「…部分的にしか…わたしは第18王朝のファラオに仕えていた神子…あの人は…邪悪なる者との戦いの末…自らの魂を千年パズルに、邪悪なる者とともに封印し、砕いた…」
「……」

 平然を装っているものの、ひかるの肩は微かに震えていた…それを知ってか、イシズはそっと彼女を抱きしめる。

「イシズさん…」
「あなたにとっては…思い出すのは辛い記憶なのですね…」
「…でも、ファラオの方がもっと辛い…だからわたしは…少しでも彼の辛いのを和らげたい…!」
「…ひかる、記憶を呼び覚ますにはこの戦いの果てに手に入るある物が必要となるのです」
「ある物?」

 イシズは彼女を放すとファラオと神官の描かれた石版の上部を指差した。


「あそこに描かれているのは伝説のファラオのしもべ達…」
「…あれは……」
「あれらを我々は"神のカード"と呼んでいます」
「…"オシリス"に"オベリスク"…そして"ラー"…」
「…やはりあなたには名前が…」
「!…わからない、頭の中に言葉が…」
「あなたは…『翼の記憶』を封印していると…リョウというものが石版に印してあります」
「翼…?」
「どういった意味かはわかりません…」
「……」


 もう一度、ひかるは石版を見上げた。


「その"神のカード"がこれから始まるバトル・シティで手に入るのね?」
「ええ…」
「……(もしかして…これがシャーディーの言っていた、もう一つの鍵…)」






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