光の女神伝説

□Turnー15
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 パズルカード2枚を手にしたひかるはあまりひとけのない裏路地へと入った。その時、千年杖が光を放ち、彼女は立ち止まる。


「この力は…」


 薄暗い、細い道を進んでいくとその先に、見覚えのある人物が立っていた。


「…バクラ」
「!…ひかるか、こんなところで会うなんてな」

 ひかるはペンダント状の千年杖に手をかける、一方彼は無防備なまま、じっとひかるの方を見ていた。

「…ほう、お前もこの大会の参加者か」

 彼女の腕に付けられたデュエル・ディスクを見て、そうバクラはつぶやいた。

「!…だったら何?」
「ククッ…隠すこたーねえだろう、この大会には千年アイテムがからんでいる…最後の千年アイテムがな」
「!(やはりバクラもそれを狙って…)」

 千年杖を元の形へと戻し、ひかるはバクラを見据えた。

「あなたに聞きたい事があるの」
「…なんだ?」

 彼は口元をわずかに吊り上げると、腕を組んで壁へと背中を預けた。



「あなたは…知っていたの?わたしのこの千年杖が七つのアイテムのうちの一つではない事を…」
「…最初は、知らなかったな」
「最初って…」
「オレ様がそれに気がついたのは遊戯の千年パズルが奪われた時さ、あの時…闇の気配を感じた…あの力は紛れも無く千年アイテム」
「……」
「あの後、気を失って倒れていたお前を見て…ある事に確信がついた」
「ある事?」

 にやりと笑い、バクラは壁から離れると、ニ、三歩ひかるの方へ近付いた。

「お前のその千年杖は、闇の力を宿す七つのアイテムの天敵だってな」
「天…敵…?」
「八番目のアイテム…それは"光"を宿す、その"光"は"闇"を浄化、無へと帰す、ってな」
「闇を…浄化…?この千年杖が…」
「とはいえ、八番目の存在は噂話程度だった、オレ様も最初は信じちゃいなかった…だが今回の事で本当の話だって事がわかった…ついでに言うと、オレ様は千年杖に触れないからな…」
「触れない…?」
「オレ様の中に"邪念"があるからな」

 バクラは千年リングを取り出し、彼女を見た。


「おかしいとは思っていた、最初に会った時、千年リングは反応を示さなかった」
「え…」
「千年リングには他のアイテムの邪念を感じとることができる…千年杖には邪念はない、反応しなくて当たり前だ」
「邪念が…ない?」
「それともう一つ、王サマの記憶に関しても、確信がついた」
「!」

 千年リングから手を離し、バクラは再びニ、三歩、それに合わせひかるも後ろへと下がっていく。


「王の記憶を呼び覚ますには、七つのアイテム、そして三枚の神のカード、あと二つ」
「二つ?」
「そのうち一つは…お前が一番わかってるハズだぜ?」
「……名前…?(あと一つは…?)」
「……(どうやら気がついていない、いや…わかってないようだな…お前の存在、自分自身が最後の鍵という事に)」


 考え込むひかるの一瞬の隙をつき、バクラは一気に彼女との距離を詰めた、それに気がついたひかるは慌てて間を空けようとするが、千年杖を持たぬ手を掴まれ、壁際へと押しやられてしまう。


「っ!(一瞬の隙を…くっ…!)」
「……あの時、どうして倒れたか、わかるか?」
「え…?」
「千年パズルが奪われた時だ」
「!……」

 バクラから目を逸らすと、その時の事を思い出す。



「……っ…わかんない、ただ…思い出したくない…感覚だった…」

 震えた声でそう答える、バクラは掴んだ手を少し緩めると言葉を続ける。

「千年パズルと"ひかる"は繋がっている、千年パズルが砕ければ、"ひかる"も消えて失くなる」
「!!」
「理由は…そのうち嫌でもわかる」
「…ま、待って…どうしてそれを…」
「……」
「…バク…!!」


 バクラはひかるの額へそっと唇を当てると彼女を放した。



「じゃあな…悪いが最後のアイテムはいただくぜ」
「あ…」



 去っていく後ろ姿を見つめ、力無くその場へと座り込む。



「……」
《大丈夫…じゃないよね…》
「…わからないことが有りすぎる…神子じゃなく…女神で…千年杖は千年アイテムの天敵で…わたしと千年パズルは繋がってる…?わかんないよ、もう…」
《…ひかる》
「どうしたらいいの?わたしは…わたしは…っ!」

《ひかるは、どうしたいの?》
「!シャイン?」
《どうしてひかるはこの大会に参加したの?大嫌いなルールなのに》
「それは…神のカードを手に入れるために…」
《それは、誰のため?》
「…ファラオの…ため…」
《それでいいじゃない、わからないこと沢山、でも記憶を取り戻せばきっと》
「……そう、だよね、わたしは…」


 立ち上がり、薄暗い道の先を見つめた。


「ファラオのために戦う、どんな事があってもわたしは…」
《うん、そうだよ》
「ありがとう、シャイン…わたしは、迷わない…ファラオのために、わたしは…」

『バトル・シティを勝ち上がる!』



「よし、行こう」

《うんっ》




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