虹色の勇者−テレジア編

□fate-3
1ページ/5ページ



〜ドープルーン・ギルド〜

「……」

「あ、気が付いたようですわ」
「そうか…それはよかった」

 ベットに眠っていた少女はゆっくりと体を起こし辺りを見回す。

「……」
「大丈夫ですか?ご気分はいかがですか?」
「…わたし…?」
「密林で倒れていたのを我々の仲間が見つけここへ連れて来たのだが…覚えていないかね?」
「みつりん…?わからない…」
「…そうか…わたしはウッドロウ・ケルヴィン」
「わたくしはフィリア、フィリア・フィリスと申します…あなたは…」
「わたし……わたし、は…?…わから…ない」

 少女の言葉に二人は顔を見合わせた。

「…もしや記憶喪失では…ウッドロウさん…」
「フム…彼女を見つけたのはリオン君だからな…彼にどのような状態であったのか聞く必要があるようだな…」
「そうですね、…あ、でも今…魔物退治の依頼を受けて火山に行っていますわ」
「そうか…では戻って来てから聞くとしよう」
「あの…あなた達は…」
「わたし達は困っている人々から依頼を受け仕事をしている、アドリビトムという自治組織のメンバー…わたしがこの街のリーダーを勤めさせてもらっている」
「アドリビトム…」
「"自由"という意味をもっているのですよ」
「自由…」

 少女はフィリアの言葉を小さく繰り返し、笑った。

「"自由"…アドリビトム、か」

「…そうですわ、お名前…どういたしましょう…」

 ふと、フィリアが口を開いた。

「あ…そっか…無いと不便…ですよね」
「記憶が戻るまで仮の名を考えてはいかがですか?」
「そうですね…ん〜…」

 そこへ扉が開き黒髪の少年が入って来た。

「リオンさん!」
「ここにいたのかフィリア…依頼は完了した」
「ご苦労様です」
「ああ…ん?」

 リオンはベットに腰掛ける少女を見た、同時に少女もリオンを見、目が合う。

「…目を覚ましたか」
「あ…」
「それで…何者なのか、わかったのか?」

 彼はフィリアと少女を交互に眺めた。

「それが…記憶を無くしているようでして…何も覚えていないそうなんです」
「!記憶…喪失?」
「えっと…はい…」
「……」

『坊ちゃん!やっぱり彼女…』
「ありえん…」
「…?坊ちゃん…?」
「!!」

 少女のその一言に三人は表情をまともに変えた。

「…お前…!聞こえるのか?」
「聞こえる?…もう一人どこかにいるんじゃなくて?」
「……」

 リオンは少女に歩み寄り腰の剣を抜いた。

「さっきの声はこいつだ」
「…剣?」
「ソーディアンという特殊な剣だ、資質の有る者以外には声は聞こえない」
「そう…なんだ」
「…お前、名前は?」
「!…わからないの…」
「!!わからない?」

 リオンは剣をおさめフィリアを振り返る。

「どうやら名前すらも…それで今代わりの名前をと」
「仮の名…か」

 俯いた少女に再びリオンは目を向けた。

(謎だらけではあるが…嘘をいっているようには見えない…しかもマスターの資質を持つ、か…だが、アイツはもう…)

「……ルウ」
「えっ?」
「お前の名前だ、たった今考えついた、嫌なら自分で考えろ」
『え、えぇぇっ!?どうしちゃったんですか坊ちゃん!』
「うるさいぞ、シャル」
「…ルウ…うん…いい、です…ありがとう、リオンさん」
「…リオンでいい」
「決まり、ですわね…改めてよろしくお願いしますわルウさん」







次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ