虹色の勇者−テレジア編

□fate-1
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〜アイリリー・世界樹の根元〜



「起きて!キミの世界"テレジア"は大変なことになっているんだぞ!!ホラ!起きて!!」

 呼ぶ声に答えるように、横たわっていた少年はゆっくりと体を起こした。

「目が覚めたかい?なかなか起きてくれないから心配しちゃったよ」
「…ここは?」
「ここは世界樹の根元、たった今キミはここの世界樹から生まれたんだよ!オイラ、モルモ!キミの名は?」
「…リオル」

 少年は目の前にフワフワ浮かぶ、目つきの鋭い小さな生き物にそう答えた。

「ふんふん、リオル…いい名前だね、ヨロシク相棒!」
「……」
「キミはこの世界"テレジア"の世界樹より産み落とされた"ディセンダー"なんだ、キミは生まれたばかりだからわからない事の方が多いと思うけど、ま、オイラがついていてやるよ!」
「テレジア…」
「オイラもディセンダーなんだ、ただこの世界じゃないけどね…"ヤウン"っていう異世界のディセンダーさ!ディセンダーってわかるかな…?まあ説明するとだね、この世界は今…」


―――きゃあっ!


「!!」
「悲鳴だ…!!リオル、説明は後だ後!声の元へ云ってみよう!」
「う、うんっ!」

 奇妙な生き物、モルモとリオルは声が聞こえた方へと駆け出した。








 しばらく行くとピンクの髪の少女に兵士らしき男が詰め寄っている場面へと遭遇する。


「あれだよリオル、女の子が襲われている、助けなくっちゃ!」
「−!」

 すると兵士がリオル達の存在に気が付きこちらへと向きを変えた。


「何だ、街で見かけない顔だな…お前もスパイか?」
「…スパイ?何の事だよ」
「まあいい、お前らまとめて片付けてやる!」

 兵士が剣を抜いた、リオルは後ろへと飛びのき距離をとる。


「リオル!」
「…やるしかない、か」

 リオルは兵士目指し駆け出した。

「ハァッ!」
「!っと」

 兵士の一撃をかわし背後に回り込む。

「―魔神拳!!」

 拳に闘気を込めて放つ、それは兵士に直撃し気を失わせる。

「ふぅ…」
「凄いやリオル!」

 モルモは感嘆の声をあげると少女へと近づいた。リオルも、モルモを追い掛ける。


「キミ、大丈夫?」
「あなたは?」

 と、そこへ弓を背負った髪の長い青年が駆け寄って来た。

「カノンノ!!無事だったか?」
「チェスター…大丈夫、この人達が助けてくれたの」
「オイラモルモ!こっちはリオル」
「オレはチェスター、チェスター・バークライトだ、カノンノを助けてくれたようだな…礼を言わせてもらうぜ、…ん?」

 チェスターと名乗る青年はモルモとリオルを交互に眺めた。

「街では見ない顔だな…お前達難民か?」
「スパイの次は難民?難民て何?」
「この街の人間じゃないんだろ?どこから来たんだ?」
「えっと…世界樹と、から…?」
「……?あーまあいいや、とにかく君も難民なんだ、無事に街に入れてよかったな」
「もー信じてない…」
「ひょっとして…記憶が無いの?」

 カノンノと呼ばれた少女が悲しげに呟いた。

「あなたも記憶が無いのね、この街に来るまでの記憶が…」
「!…」
「こんなところをうろついているとまた兵士に目を付けられちまう…さあ、戻るぞカノンノ」
「うん、あ…あの、わたしカノンノ、さっきは助けてくれてありがとう…じゃあ」
「リオル…だったか?もし行き場が無いのなら街で"クラトス"って男を訪ねてみろよ、"アドリビトム"って言えば話は通じると思う」
「…アドリビトム?」
「ああ…じゃあな、また会えると信じてるぜ」

 そう言うと二人は行ってしまった。



「行っちゃった…ここは物騒みたいだし、街へ行こうよ」
「そうだね…」



 リオルとモルモも街へと向かった。






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