おお振りBL小説
□茜色の約束(前編)
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そして、デートの日になった。
この日が来るまでは待ち遠しいという思いと、最後かもしれないから来て欲しくないという思いが錯誤していた。
今日は、水谷と二人きりで一緒に過ごす時間だし… どんなに悲しい気持ちになっても思いきり楽しんで笑顔でいようと心に決めていた。
「栄口〜」
「あっ、水谷!」
愛しい彼が手を振りながらこっちに向かってきた。
「悪りぃ悪りぃ…」
「大丈夫だよ。2、3分くらいしか待ってないから!それより、切符買っておいたから電車乗ろうか!」
今日は遠出をするコトにしていた。
行き先は…水谷には言っていない。
オレたちは1時間ほど電車に揺られると、目的地へと着いた。
「着いたよ、水谷!」
「ここって…」
着いた瞬間、水谷は懐かしむような表情で風景を見ていた。
目的地とは、水谷と付き合い始めて最初のデートで来た海であった。
「ここって、水谷と初めてデートに来た場所じゃん?あの時、もう一度水谷と二人で来たいなぁって思って… もしかしたら今日が最後かもしれないからさぁ…」
「……」
水谷は黙っていた。
「水谷、今日は朝早く起きて弁当つくってきたんだよ!」
オレは笑顔で弁当を取り出した。
水谷は黙ったままだったけど、オレは必死に笑いかけ、話しかけた。
せっかくのデートをつまらなくしたくはなかったから…
「あっ、ありがとう栄口。…美味しそうだねっ!」
「さっ、水谷食べようよ。」
水谷は笑顔になり、美味しそうに弁当を食べてくれた。
「栄口は相変わらず、料理が上手いなぁ!」
「へへっ、ありがとっ!」
水谷と過ごす時間はやっぱり楽しいもので、あっという間に夕方になってしまった。