裏
□似た者同士
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「なンとか、片付いタ」
縁は書類から目を離した。
人誅が終わって数年落人村に身を預けていた。
落ち着き始めた頃に、東京港沿いに小さな貿易会社を建てた。
5年間して来た事だったからいつの間にか習慣になっていたので、順調に進んでいた。
あの憎悪は何処に行ったのか、縁は人が変わったように穏やかな人になっていた。
元々、穏やかで優しい子だったのかもしれない。
「………」
今日は星が綺麗だ。
もっとよく見たくなって窓から空を見上げた。
「このクソガキ!」
「ってな!離せよ!!」
突然、ドアの外が騒がしくなったので首を傾げながら刀を手に開ける。
いたのは縁と同じく残業していた従業員と緋色の髪が父親そっくり(その容姿までもが)な青年が取っ組み合いをしていた。
「……何しにきたンだ、剣路」
「あっ!縁さん!」
「ったく。俺の客なンだ。離してヤレ」
「………はい」
「べーっだ!」
「来イ」
挑発をし始めた剣路の腕を掴んで部屋に入れた。
ムカつくほど父親そっくりなのに性格は似ていない。
寧ろ、自分に近いものを縁は感じていた。
「で、今日は何があったンだ?」
「別に。縁さんの顔見たくなったはダメ?」
「冗談もタイガイにしろヨ。ガキ」
「んだよ。俺、本気なのにさー」
「………夕食はどうしタ?食べたカ?」
こうして、剣路が縁の事務所に来るのは初めてではない。
何かと会いにくるのだ。
「まだ。縁さんはまだ?」
「もちろん。食べに行くカ?」
「赤べこ以外ならどこでもいい!!行こう!」
言うが早く剣路はしっかり縁の手を握り駆け出した。
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