□甘えたいけど甘えたくない
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なんて、言って妖艶に(あの顔に妖艶なんてあるのか知らないけど)笑うので、僕も笑い返した。

一気に縮地で距離を詰める。

包帯の端を手にとり、思いっきり首元を締め上げる。


「包帯、巻くの手伝ってほしかったんなら素直に言ったらどうですか?」

「ハハッ。怒ってんのか?」

「怒っている?何にですか?僕は何に怒ればいいんですか?教えてくださいよ。志々雄さん。それともこんな僕を見て楽しんでるんですか?そしたら。僕は貴方に怒っているかもしれませんね。」

「素直に言えばいいだろ?『僕に志々雄さんに触るな』って」


ぞっとして僕は志々雄さんから離れた。

そんなこと思っていない。

ぎりっと奥歯を噛み締めて、笑みを作る。


「いやだな〜。どうしてそう思わないとダメなんですか?あなたは僕のことを『使えそうだから』って理由で人殺しにしたてあげたんですよね。そんな人を恨みはすれど、尊敬なんてしませんよ」

「お前って・・・そこまで昔はひねくれてなかっただろ?」

「どういう意味ですか?」

「いや、俺が悪かった。ふざけすぎた。機嫌直せ。宗」


本気で困ったような顔をして志々雄さんが笑う。

それでも僕は笑みを浮かべたまま。


「失礼します。」


と言って部屋を出た。

あの人は僕の全てなんだ。

どこまで堕ちようと、人として非道なことをしていても。

あの人は僕の全てで、虫のような奴らが触っていいものではない。

でも、それを素直に言ったら志々雄さんはやめるのだろうか。

僕だけの『志々雄真実』になってくれるんだろうか。


「無理なこと言えませんもんね。」


僕はまだ子供だ。

あの雨の日から。

『志々雄真実の修羅』になったあの日から時間は止まったままだ。

甘えたいけど。甘えたくない。

なぜなら。


(あなたにはこの幼稚な思いは知られたくないからですよ。真実さん)






END
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