□涙血
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好きな色は白。

嫌いな色は緋色。


「………」


ブチン


「ともえぇー!!」


呼ぶな。


「と……も……え……」

「呼ぶな」

「うわぁーー!!」


お前の汚い体液を落とすな。

触るな。

ギリリリッ

と、手の平に爪の食い込む感触がダイレクトに脳に響く。

大好きな姉が人斬りに殺された。

斬られた。

僕の目の前で姉さんはそれに抱かれてる。


「巴……巴……」


あれの口から姉さんの名前が出るだけでゾッとする。


「やめろ……やめろ……やめろ……」


思うのに体が動かない。


「やめろ、やめろ、やめろやめろやめろやめろ!!」


あれが姉さんに接吻した。







ブチン









二回目の何かが切れる音がした。

次の瞬間。

まるで見てる世界が舞台のようになった。

真っ白な舞台には汚れた赤の女と緋の男。


(馬鹿な人だ)


ポーンと頭に浮かんだ一言。


(そいつを庇った所で姉さんは幸せになんてならないのに。)


緋の男がただ泣く。


(汚く、血の色に染まった姉さんにはその男がとてもお似合いだよ)


嫌になるぐらい冷静に見ていた。


「あーあー。何やってたんだろ……俺」


出来の悪い三文芝居を見ている気分だった。


「帰ろう」


あぁ。

あんなに美しかった姉もあの色に抱かれるととても汚い。


「あっ。」


さらりと黒い髪が白い。

太陽に反射して綺麗だった。


「涙って何色だったっけ?」



覚えているのは。





汚い。





血の色と。





憎いあの男の。





緋色だけ。






end


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