□言葉の限界
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愛情なんて酷く簡単な言葉だ。

その一言で、この気持ちを表す事なんて出来ない。

この想いはそんな安っぽい言葉で表す事なんてしたくない。




「…あの……志々雄さん」

「あぁ?」

「僕の事、どう思ってるんですか?」

「なんだ、突然。もう、酔ってんのか?」

「いえ、大丈夫ですよ」


久しぶりに晩酌に付き合えと言われたので、宗次郎は志々雄と比叡山頂上付近にいた。

綺麗な赤い月で、周りもほんのり赤い。

その赤い月はまるで志々雄の瞳の様で宗次郎は好きだった。

飲みかけの盃を置いて、真剣な顔で考え出した。


「どう思ってるか……な」

「はい」

「よく出来た俺だけの修羅だな」

「……そんなんじゃなくて……」

「不安なのか?」

「そうでもなくて……」

「……自慢の弟だな」

「弟?」

「よく考えろよ。13しか変わらねぇんだ。弟だろ」

ポンッと頭を撫でられた。



違う。

そんなんじゃない。

僕の言いたい事は……伝えたい想いはそんなんじゃない。


「……僕は……」

「ん?」

「僕は志々雄さんが好きです。」

「なんだよ。本当にどうしたんだ?」

「好きって言葉なんかじゃダメなんです。」

「宗次郎?」


一瞬、何が起こったのかわからなかった。

世界が回った。






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