□遠慮無量
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「重くなったナ。」

「だって、もう一年も経つのよ?それにこの子すごい食べるのよ。」

「食い意地だけはそっくりだナ。」

「どういう意味よ。それ。」


薫は隣にいる男を睨んだ。

男は白髪で色付きメガネをかけていた。

服装はどこか日本離れしたような感じだ。

そんな男は緋色の髪の男の子を腕に抱えていた。

場所は荒川河口の倉庫の事務所の中だった。


「しろ!しろ!!」

「白じゃない縁ダ。」

「しろ!!」

「・・・こいつ。聞こえているんダロ?」

「だぶんね。いいじゃない。可愛いんだもん。」

「親バカめ」


うるさいな!!!と顔を真っ赤にして叫ぶ薫はいつまで経っても変わらない。

縁は微笑みながら腕の中の子を抱えなおす。

薫と剣心の子である剣路は父親である剣心には懐かないくせに縁には懐いていた。

それこそ、本当に父親のように。


「にしても、大きくなったナ。」

「・・・うん。」

「お前も。ちょっとは料理が食えるようなモノを作れるようになったカ?」

「そんなこと言いながら、全部食べてたくせに。」

「俺は残すのは嫌いなんダ。」


そうじゃないのは知っている。

縁だけは薫の手料理を全部食べてくれた。

多少残すことはあったとしても、それでもちゃんと食べれくれた。

剣心よりも先に出会っていたら、と薫はよく思うようになっていた。

剣心は好きだ。

でも、縁はまた違う感じで好きなのだ。


「縁。今度は何か作ってきてあげるわ」

「・・・遠慮するサ」

いらないとは言わない。

けど、食べたいとは思わないけどな。

と縁は薫と笑い合った。





END

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