□渇望
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「はい、志々雄さま。」

「あぁ。」

「すぐに湯浴みのご用意をしたしますわ。」

「すまねぇな。」


豪華なソファに座っているのは、包帯の男と妖艶な美女。

包帯―志々雄真実と妖艶―駒形由美。

由美がうっとりと志々雄に身を寄せている光景は、はたから見れば異様だった。

しかし、二人を取り巻いている空気は和やかだ。

それがこの血に飢えた武士崩れのアジトにおいてさらに異様な光景に仕上げていた。


「おい。」

「・・・・はい、なんですか?志々雄さん」

「頼みごとがある。」

「なんでしょう?」

「倉庫に替えの包帯があるはずだ。取ってきてくれねぇか。」

「はい、いいですよ。持って行ったらいいですか?」

「あぁ。」


志々雄に声をかけたられたのは、笑顔の張り付いた青年だった。

宗次郎はニッコリうなずき、ドアの取っ手に手をかけた。


「ねぇ、志々雄さま。わたくしが取りに行きますわ。宗の坊やにはここにいてもらったほうがいいのではなくって?」


ドアを開きかけた時に、由美がふっと志々雄に提案した。

その提案に宗次郎の動きが止まる。


「・・・・なんで、ですか?」


振り返りもせずに問う。

由美はさらっと


「なんでって・・・もし、志々雄さまのお命を狙うやつが現れたらどうするつもりなの?誰がお守りするの?」

「・・・・大丈夫ですよ。由美さん。」


ふっと顔だけを振り返らせる。






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