短
□喧嘩
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「そこに立っている女を放り出せ!」
「えっ!」
「!!」
「それはさすがにやり過ぎですよ。志々雄さん」
やんわりと否定をしてみる宗次郎であったが、うるさいと睨まれたので黙った。
方治も突然の事だったので目が点である。
当人の由美はしばらく呆然と立っていたが、肩を震わせ涙を流し始めた。
それは初めて見る由美の涙だった。
「……あらら、志々雄さん。由美さん泣いちゃいましたよ。」
「知るか」
「……わかりました」
「あん?」
「そこまで言うなら出て行きますわ!!……志々雄様なんて大嫌いですわ」
部屋の中にある由美の私物を必要最低限だけにまとめて、ずっと昔に志々雄が誕生日記念に買ってくれた簪を志々雄に返した。
「なんだ?」
「いりませんから。必要なんですもの。……お世話になりました……」
「ふんっ」
由美に返された簪を握り潰した。
そのまま由美は志々雄振り返る事なく出て行った。
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