短
□慰霊
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「そうでしたね。あっ、安慈さんに一回だけ会いましたよ。」
「会えたの?」
「はい。だいぶ顔つき変わってましたけど、元気そうでした。不二さんもすっかり人気者でしたよ」
「才槌老人はもう死んでしまっとるしな」
「え゛!そうなんですか!知らなかった」
「そうやで。蝙也は蝙也で帰ってこれんからな」
政府が闇に葬った″志々雄事変″。
当事者である彼らにとったら忘れられない出来事だったのに、政府はもうどうでもいいらしい。
最近になり、宗次郎の指名手配が解けた。
「いろいろありましたね」
「そやな。まさしく激動やったな」
「一度も政府を倒すなんて無理!!だなんて思わなかったわよね」
「志々雄さんなら出来るんだ、なんて思ってましたからね〜」
「確信なんかないのにな」
「それが志々雄様のカリスマ性じゃないの」
今は亡き主人の話に一体何年ぶりに華を咲かせただろう。
久しぶりすぎて、口から出る単語に違和感を感じる。
「……今、何してるんでしょうね……」
「んなもん、地獄の国取りに決まってるやろ。」
「そうよ。今頃はもう国取り終わってるんじゃないのかしら。」
「うわー。普通に想像できますね」
三人の間をぬるい風が通り抜けた。
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