□聖戦
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〜序編〜


それを聞いたのは偶然だった。


「そうか。アメリカに」

「姉さんにも父さんにも迷惑かけたくないし。いい機会だと思う。けど、清里先生に姉さんを渡したとか思うなよ。」

「はいはい。」


苦笑している清里の声も何処か遠くで聞いた気がした。

神谷薫は持っていた進路希望の紙をぐしゃりと握りつぶした。

雪代縁は来年にはアメリカに行く。

薫は軽い現実逃避に入っていた。


「って、ことだから書類の制作は任せた。」

「自分でするもんだと思うぞ。縁くん」

「担任なんだから、やっとけよ。」

「あ」


ガラリと開いたドアにビクっとする。

少し青みのがかった目で薫を見ていた縁は道を譲って去っていった。

聞きたい事はあった。

言いたいこともあった。

でも、それさえも言葉に出来なくて。

薫はさらに進路希望の紙を握りつぶす。


「あ、神谷さん。進路希望の紙を持ってきてくれたのかい?誰も出してくれないから困ってたんだよ。」

「先生」

「ん?」

「雪代縁は・・・アメリカに行くんですか?」

「聞いてたの?そうみたいなんだ。まってく急だよね。まぁ、彼は英語の成績もいいし行っても大丈夫だと思うんだ」

「帰って来ないんですか?」

「う〜ん・・・その辺はまだ考えてるみたいなんだけど、アメリカの大学にはいきたいみたいだよ。」

「いつ行くんですか?」

「3月には経つみたいだよ」


3月ってあと二ヶ月しかないじゃないか。

薫は失礼します、と頭を下げて走り出した。


「神谷さん!!!進路希望は!?」











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