短
□遇然
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流浪になってまだ半月。
剣心は神奈川辺りを歩いていた。
この辺りの人は忙しそうに働いている。
みんな幸せそうにそれでいて、忙しいのが充実しているかのような顔だった。
「・・・」
オレはこんな人たちを守りたい。
あの人を守れなかったから。
と、剣心は思いながら足を止めた。
「え?」
「?」
どんっと何かが腰にぶつかって、パリンッと割れる音も聞こえた。
まさかと思って振り返る。
ニコニコと笑った子どもが困ったように割れた酒瓶を見ていた。
「まいったなぁ。割っちゃった。」
本当に困っているのか、見た目ではわからないが呟きからして困っているのだとは思う。
「すまない。」
「あ、いいんです。僕が前を見てないだけですから。」
にっこりと笑う。
着物はボロボロで所々が赤黒くなっている。
しかも、まだ体には痣が痛々しい程残っていた。
(まさか、)
身売りされた子なのではないだろうか。
幼い日の自分を重ねて剣心は慌ててその子に話かけた。
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