短
□代理
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いつもの桜色の着物じゃなくって、白い着物を着る。
髪もいつもは高めにまとめるけど、今日は低くまとめる。
香水は好きじゃないけど、今日だけは『白梅』の匂いをまとう。
肩に紫のストールをかければ完璧だ。
「・・・巴さんに見えるかな?」
少しずつ彼の為に集めたこの着物や髪飾りたち。
これがやっと役に立つ日がきたんだ。
鏡の前で笑う。
おしとやかに笑わないと、巴さんっぽくはないからね。
話し方もゆっくりしないと、京都の人はそうだって操ちゃんから聞いたし。
「今日こそは綺麗だって言ってくれるかな?」
いつも言われているけど、違うの。
それはきっと巴さんに向けて言っているのであって、私じゃないの。
「剣心、ちょっと出かけてくるわね」
「薫殿、どちら・・・に」
「ちょっと、そこまで」
「その姿は・・・・一体?」
「え?あぁ。少しは違う感じにしてみようかなって。似合うかな?」
「・・・いつもの方が拙者は好きでござるが・・・」
剣心の感想なんか聞いてない。
どうでもいい。
彼がなんて言うかだけなの。
「逝ってきます」
「早めに・・・帰ってくるでござるよ」
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