短
□宗次郎の嘘
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「ほんにも〜。宗ちゃんがうちの子ならよかったわ〜」
「僕もそう思いますよ。」
「うちの真実なんかよりもかわえぇし」
「嫌だな〜。義母さんの方が可愛いですしお綺麗ですよ〜」
あはは〜うふふ〜と目の前で繰り広げられているお世辞の言い合い(母のは本気と捕らえてもいいと思う)に真実はうんざりとため息を吐いた。
今日の朝急に宗次郎から電話があり、『家ってどの辺ですか?』と聞かれたので答えてやれば、その50分後には真実の実家である祇園の老舗和菓子店の前にいた。
そして、今にいたるのだ。
「先輩のおうちのお菓子ってどれもおいしそうですよね〜」
「いっぱいあるから食べ。」
「いいんですか!!!やった!!先輩も食べよ」
「俺は「真実はあかんよ。また詰めもん取れたらえらいことやからね。」
「詰め物?」
断ろうとしたとたんに横から口が入る。
この店の跡取り娘として育った真実の母は息子に厳しいのだ。
口うるさくって嫌になり家で同然で学校に通っていたのだが、高校卒業して家業を継ぐしかないかと戻ってきたはいい。
が、帰ってきたら帰ってきたで店の者がお帰り!とケーキを毎日のように(しかもホール)くれたので食べていると虫歯が悪化してしまったのだ。
宗次郎が来るちょっと前まではチャーリーとチョコレート工場のウィオンカさんのようか器具をつけられていた。
今では普通のご飯が食べれるが、歯がしみて寝れない日が続いている。
「この子ね、虫歯あんのよ。おかしいでしょ?」
「虫歯って先輩・・・」
ニタリと宗次郎は笑う。
もう嫌だ!と真実は天井を見上げた。
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