□チョコの日
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逆に。

逆に腹が立つかもしれない。

志々雄はむすっと目の前に出されたキャラメルと睨んだ。

つい最近。

また、歯が痛くなったので歯医者に行けば虫歯だと言われた。

詰めものをしたら直るとか言われたのでただいま詰めもの中だった。


・ガムやキャラメルは食べないこと
・甘いものの過度な摂取は控えること
・タバコはやめなさい


が医者に言われたことだった。

そこをこんなにも硬く守ることになるなんて、虫歯ってすごいなと自分でも関心しているときだった。


「あれ?いらないんですか?」


なんて白々しい。

わかってやっているのは見え見えだった。

誰がそんな手に乗るか。


「いらねぇな」

「詰めものが取れるからですか?」

「・・・知ってんのに出すか?」

「えぇ?やっぱりそうだったんですか?」


なんてニコニコしながら言ってくる。

この後輩・瀬田はそう言う奴だった。

ニコニコしながら人の嫌なところをついてくる。

やめて欲しい。


「先輩。甘いもの好きでしたよね?今日はバレンタインですよ?いらないんですか?」

「はっ。んな子供しか喜ばないような行事に喜ぶようなことはしねぇよ。」

「またまた。はしゃいで虫歯になるのが恐いんでしょ?」


図星。

志々雄はきっと宗次郎は睨んだ。

宗次郎はニコニコしたまま手の中でキャラメルを転がしている。

食べないぞ。

食べたいけど、食べないぞ。

今回のを完治するまで何も甘いものは食べないぞ。

心に決めたんだ。

絶対に食べない。

そんな志々雄を知っているのかどうか(確実にしっている)わからない宗次郎は持っていたキャラメルを口の中に放りこんだ。


「いらないんですよね?」

「そうだって言ってんだろ?」

「なんで、そんなもの欲しそうな顔してるんですか?」

「してねぇよ。」

「してますよ」

「絶対にしてねぇよ!!!うざいから菓子もって消えろよ!!!」


糖分が足りなくってイライラするんだ!!とどこぞの糖分王のようなことを言い出す志々雄に宗次郎はにこっと笑みで返す。

そして、


「じゃ」


ちゅっ・・・にゅるっ

と志々雄の唇に柔らかいものが当たり、口の中に甘い味と硬いものが入ってきた。


「これでいいですか?」

「な・・・にしてんだ!!!この野郎!!!」

「あははっ。先輩、顔真っ赤ですよ〜」

「宗。もう許さねぇぞ。今日という今日は!!!」

「じゃ、僕はチョコ貰って気ますね〜」


先輩って意外と純情なんですね〜なんて暢気なことを言いながら宗次郎は笑いながら去っていった。

そんなこんなで、志々雄の踏んだり蹴ったりなバレンタインは続くのであった。









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